海外

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

暖かな破局:第1部・温暖化の政治経済学/7止 「一石二鳥」作戦の石原都知事

 ◇五輪狙い環境対策

 石原都政が地球温暖化対策に積極的だ。今年6月に「気候変動対策方針」を策定、「国に代わって先駆的な施策を提起し、温暖化対策をリードする」と意気込む。20年に00年比で二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを25%減らす計画だが、別の狙いもある。

   ×    ×

 「あまり収穫がなかった。東京が一番進んでいる」

 5月にニューヨークで開かれた世界大都市気候変動サミットに出席した石原慎太郎知事(75)は断言した。会議にはシカゴ(米国)やマドリード(スペイン)など16年の五輪招致を競うライバルが参加していた。

 都は五輪招致を表明した05年、大規模事業所に温室効果ガスの排出削減計画の策定を義務付けた。気候変動対策方針では一歩進み、削減義務付けや都独自の排出権取引導入などを掲げる。「(他都市で)そういう規制を条例でやっているところはない」(石原知事)

 かつての五輪は大規模開発のけん引役だったが、近年の開催地選考では環境対策が最重視される。08年の北京五輪の理念も「緑色奥運(緑の五輪)」だ。関連施設に設置する自動販売機や冷蔵装置に、温室効果の高い代替フロン類を使わないなどの対策をとる。シカゴは、5年以内に街の必要エネルギーの2割を自然エネルギーで賄う計画だ。

 水野正人・日本オリンピック委員会副会長は「五輪と環境で最大の課題はCO2削減。各都市ともよく知っている」と語る。

   ×    ×

 石原都政の特徴は、国との対決姿勢と環境問題重視だ。就任直後のディーゼル車NO作戦はその典型で、スス入りペットボトルを手に「都民はこれを毎日、吸わされている」とアピール。国の排ガス対策強化につながった。その姿は、政敵だった故美濃部亮吉・元都知事にダブって見える。

 67年から12年間、革新都政を率いた美濃部氏は公害対策などで国政を批判、独自の「公害防止条例」を制定し、国に規制を後追いさせた。石原知事は75年の都知事選で美濃部氏に敗れたが、大学以来の友人の高橋宏・首都大学東京理事長は「美濃部氏の環境行政は評価していた」と明かす。

 だが、都内の温室効果ガスは急増中だ。05年度の排出量は6860万トン(CO2換算)で90年度比12・5%増。国全体の同7・8%を上回る。景気回復で都心のビル建設が相次ぎ、オフィスなど業務部門は90年度の1・5倍に激増した。

   ×    ×

 都幹部は「表向きは五輪に関係なく温暖化対策を進めるが、決定までにどれだけ対策の“弾”を準備できるかが勝負」と話す。温暖化対策を五輪招致の武器にし、一方で招致運動を対策の推進力に使う「一石二鳥」作戦だが、招致に失敗すれば対策も失速しかねない。答えは開催都市が決まる09年10月に出る。=おわり

     ◇

 この連載は山本明彦、元村有希子、田中泰義、鈴木玲子、江口一、高山祐、服部正法、阿部周一、森禎行、葛西大博、鴨志田公男が担当しました。第2部「地球からの警告」を元日紙面から始めます。

==============

 ご意見・情報をお寄せください。kankyo@mbx.mainichi.co.jp▽ファクス03・3215・3123▽〒100-8051 毎日新聞科学環境部「温暖化問題取材班」

毎日新聞 2007年12月18日 東京朝刊

検索:

海外 最新記事

海外 アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

おすすめ情報