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まちづくり |
膨らむ希望 浮かぶ課題 |
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まちづくりに向けた報告集会。これまでにない朗らかな表情で、住民たちは共に闘ってきた町内会役員や支援者たちに拍手を送った(9日、宇治市伊勢田町・府立城南勤労者福祉会館) |
「さあ!新しい町づくりへ」。九日、宇治市伊勢田町ウトロ地区の住民で組織する中間法人・ウトロ町づくり協議会が、近隣の会館で開いた集会。集まった約二百人の住民と日韓の支援者の関心は、掲げられたスローガンそのままに、まちの将来像に向けられた。
公的住宅、高齢者福祉施設、コミュニティーセンター…。集会で、同協議会は住民側が想定する今後のまちづくりの「基本方針」を発表した。厳明夫副代表理事(ウトロ町内会副会長)は「西半分も日本行政に買い取ってもらい、総合的な住環境整備をしてもらいたい」とし、地権者から協議会が買い取る東半分だけでなく、残り西半分も合わせたまちづくりをあらためて行政に求めていく姿勢をみせた。
方針の行間には、仮に公的住宅建設が実現に向かったとして、工事中に住む代替地をどうするのか、西半分の住民は入居できるのかなどの懸念とともに、何よりも「ウトロは地区全体で一つ」との住民の思いが凝縮されている。ただ、これまで行政側はウトロ問題を一貫して住民と地権者の「土地所有権の問題」としてきただけに、今後この西半分の土地の処遇が解決に向けた大きなハードルの一つになる。
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ウトロ地区と同様に在日韓国・朝鮮人が多く住む地区で、住環境整備の事業が実施された京都市南区東九条の通称「四カ町」。火災の多発を機に、老朽化した木造住宅の密集する地域環境の改善を求める住民運動が起き、市が一九九四年から順次、土地を買収して市営住宅や福祉施設を建設してきた。
四カ町ではいま、若年層の流出と、住民間の絆(きずな)の維持という課題に直面している。十五歳未満の人口は十年前に比べ約六割減。入居者六十六人のうち七十歳以上が二十四人の南岩本市営住宅に住む木村正満さん(70)は「若者や子育て世代が必要」という。かつての近所付き合いが薄れており、食事会を年三回開くなど苦心している。
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ウトロ地区の集会では今後の検討課題として、高層の集合住宅だけでなく、高齢者が住み慣れたいまの家に近い木造平屋などの建設を求める声もあった。さらに基本方針では、在日の集落としての地区の歩みを伝え、住民間の絆を深めるとともに、多文化共生も視野に入れた「歴史資料館」建設も盛り込んだ。
住民は地区内に掲げた看板群のうち「強制執行反対」など一部の看板を近く外す。来年は、まちづくりに向けた希望の言葉を代わりに掲げようと考えている。
<まちづくり基本方針>
ウトロ町内会が5月にまとめた「ウトロ街づくり計画書」が原型。同計画書は、討論会や勉強会、兵庫県伊丹市中村地区や東九条地区の視察など1年以上かけて策定、後に支援金を国会上程した韓国政府にも提出した。
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