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07/03/17、07/03/20〜07/03/24 放送 バックナンバー
学校で子供を死なせるということ
ゲスト:
全国学校事故・事件を語る会代表世話人・内海千春さん

聞き手:
戸石伸泰記者
 
学校が事実を言わない! 沈静化という名の緘口令
地域も信用できなくなれば、人も信用できなくなる
死んでもなお粗末に扱われている子供たち
表に出ないよう処理する手腕が問われる行政マン
本当のことをよく知っているのは被害者と遺族
 学校での事件や事故で命を落とす子供たちが後を絶ちません。いじめを苦にした自殺、暴行による死亡、危険な設備や不注意による事故死。悲劇が起こった時、原因を徹底的に究明して、2度と繰り返されないようにすることが求められているはずです。しかし日本の学校では、逆に事実を隠そう隠そうとすることが多く、被害者遺族を2重3重に苦しめていることがわかってきました。今週は、御自身も当時小学6年生だった息子さんを教師の暴行による自殺で失った、全国学校事故・事件を語る会代表世話人、内海千春さんにお話しを伺います。
■学校が事実を言わない! 沈静化という名の緘口令

 ご自身もご長男の平さんを亡くされて、平成6(1994)年9月9日、担任教師から暴行を受けて、しかも全く理屈に合わない暴行を受けて、それがショックで自殺されてしまったということなんですが、直後は当の教師も校長もお宅に来られて、『私の暴力で……』というようなことで認めていたということですよね?

 「はい、そうですね。9月9日ですね。僕の職場に家から、『息子がまだ家に帰ってきていない』と、『こんなことないから、おかしい』という電話がありまして、僕も家に帰って、女房も帰ってきて、当然担任の先生に『平がまだ帰ってないんですけど』と電話したら、最初は帰っていない理由の1つとして、(担任教師が)『今日、きつく叱りました。2度ほど手を上げたので、そのせいかもわからない』と。で、まあ探していたわけですね、こちらは。
 で、夜ですね、自宅の裏山で首を吊っている息子を、僕の父、つまり祖父が発見して、ちょうどその時に、お祖母さんが先生と電話していたんですが、『平が死にました!』とバチッと(電話を)切ったんですよ。
 そうしたら先生が来られて、(玄関に)立つなり声もなく『全て僕の責任です』と。(担任教師は)もう呆然として……。家は混乱状態で、警察が来たりとかしていたんですけど、家を出たところの道端に座り込んでしまっている先生を見つけて……。
 実はその先生、おかしいからということで警察に事情を聴かれているんですよね、その日にあった暴行について。自殺の原因として思い当たるものとして。暴行罪の容疑者の調書なんですけど、その日にあったことを調書にとられているんですよ。
 それから、校長先生も来られて、『私は、もう教育者として失格だ』と。
 僕らは、まだ何が起こったかさえ(わからなかった)。ただ、それを聞いただけで、『何か叩かれたんだろうな』、『何か学校でとんでもないことが起こったんだろうな』と。
 実はモノのスタートはそこからだったんですわ。スタートは、当然、自殺であるし、原因は、僕らがどうこう言う前に学校の方から、先生の方から『全て私の責任です』と。
 10日が通夜、11日に葬式を出して、9月の12日の月曜日に平の荷物を受け取りに学校に行ったんですよ。そこで教室まで行って、担任の先生と校長先生がいて、『何があったか教えてくれ』と言ったら、校長先生が『いや、そのことについてはまだ』と、明らかに隠そうとされる。2晩の間にパッと変わったんですよ。
 思わずアッと思って、『何で隠すんですか?』と言ったら、(校長は)『いや、そのことについては言えない』とか『まだわからないから』とか。
 僕と女房はものすごく、あの時はよく言う切れた状態ですね、怒りましたね、『3日も経っているのに、何故わからんのだ!』と。そこに担任の先生がいたから、『あなたがわからないはずがないだろう』と、『何があったか教えろ』という形で詰め寄ったんですよ、ガーッと。
 で、やっとそれで『話します』ということで聞いたのが、9月9日の暴行の件だったんですよ。
 だから、もうその時から、隠そうという、つまり何らかの、校長先生というよりも何らかの圧力が教育委員会の上の方からかかっていたんでしょうね。つまり、『隠せ』って。『言うな』って。
 実は、その日の朝、11日の朝、教育委員会に僕も行ったんですよ。その時に、校長先生も一緒に(教育委員会に)おられましたからね。つまり、そこでずっとこの事件についての対策を相談されていたということでしょう」


  対策は相談されたんだけど、それは事実究明ではなかった?

 「事実究明ではないですね。今になってみて、はっきり言えますね。
 だから、どういう形で事件を沈静化させるのか、終えるのかという方策の相談であって、何があったかとか、そのことについて教育的にどうするべきかという相談ではなかったと思います」


  沈静化させる?

 「沈静化ですね、まさに」


  あまり騒がれないようにする?

 「そういうことです。表に出ないようにするという」


  まず、優先順位がそこに来るわけですか?

 「そうですね。行政の考え方です」
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■地域も信用できなくなれば、人も信用できなくなる

 内海さんとしては、そんなことよりも、やっぱり何が起こったかをはっきりしてくれよということですよね?

 「そうですね」


  でも、そうはならずに、しかも沈静化の動きというのは学校現場だけにとどまらなかった?

 「はい。
 一番大きなきっかけというのは、報道に息子の事件のことが出たことですね。『体罰の直後に自殺』みたいな形で報道が出ると。僕らは報道が一度出ると、他の報道機関から取材を受けますから、それに追われていましたが、そうすると地域を挙げて小学校、西小学校と言うんでが、『西小学校を育てる会』みたいなものが作られるんですね。地域の有力者を挙げて。
 自治会や老人会、婦人会、全組織を動員したような形で集会が立ち上げられて、で、そこで追悼会をやるから出て来いと。
 で、その中のことなんですけど、その会は、原因とか何があったかを明らかにする会じゃないんだと。西小学校があたかも色々な報道でとんでもない学校のように言われているから、西小学校を守っていかなければならないと。名誉回復するんだと。これは、そういう集会だったんですよ。
 ところが、原因究明とか、そういうことをせずして沈静化かけられたら、どうしようもないじゃないですか。
 ただ、僕ら、怖かったのは、地域全部を挙げてなんですよ。もう老人会も婦人会も自治会長も全部集められて、有力者を全部集めて、教育委員会も乗り込んでやっているんですよ。地域の人もね、そういう風に集会に出されて、例えば僕らが『何があったか明らかにしてください』と言っていることがおかしいと(なるんですよ)。PTAの方もそうだし、『育てる会』の人もそうだし、そういう風になったのは、そういう風になるような情報がね、意図的に行政とか、沈静化かけようとしている人たちから流されていたようなんですね。これも後になってわかったんですよ。
 だから、単に(人を)集めてやるだけではなしに、遺族とか被害者を押さえ込むために、周りを敢えて動かす。で、周りが、遺族の言っていることがおかしいんだよと思えるような情報を流していくわけです」


 結局、沈静化という名の、学校側とか行政側に責任は無かったことにしようという風に堀を埋めていくわけですね?

 「そうですね」


 そうすると、でも平さんは亡くなっているわけだから、消去法でいくと、問題は平らさんの方にあったんじゃないかという言い方になってしまいますよね?

 「まさにそうなんです。何があったかはっきりしない状態で自殺ですから、当然、家庭の問題とか、個人の問題ですね。育てる会の集会では、『平くん、何を悩んでいたの? わかってあげられなくてごめんなさい』ですわ。つまり、暴行のことはいっさい触れずに、そのことだけ言うんですよ。だから、平は、何か家庭の中で悩みがあって、誰にも相談できずに死んだという構図ですね」


 で、弱い子だったという風に持っていくわけですね?

 「はい。そういう形ですり替えられていく」


 しかし、普通の元気な明るい平さんだったわけでしょう?

 「ごく普通の子ですね。だから、1つは、そういうような形ですり替えられていく。
 それだけじゃなしに、逆に子供を亡くして、そうすり替えられることで、(遺族は)2重3重に苦しめられて、余計に世の中が信じられなくなる。
 学校なんて善なる所じゃないですか、『どうあるべきか』を考える。嘘っぱちですね、あんなの。もう、何やっても良いと。知らぬ存ぜぬで通せば、何でも許される。その時、そう思いましたよね。
 それは人が信用できなくなる。地域も信用できなくなれば、人も信用できなくなる。本当に、もうボロボロと言うか、外にも出られない状態。
 世の中の人は、全部、敵に見える。だから、子供を失って、本当に孤立と言うのか、逆にですね、自分の方がおかしいんじゃないかと思うぐらい。
 だから、初めて僕に会ってくれた弁護士が、実は心配したのは、事件のことじゃなかったんです。僕らが、後追い自殺しないかと。
 それぐらいまでにボロボロにされていたというね。それが、この学校事故の怖さだと思うんです」

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■死んでもなお粗末に扱われている子供たち

 内海さんのケースは、結局、検察が動いて当該教師は暴行罪で書類送検(後に略式起訴され簡易裁判所が罰金命令を出す)されましたね? どれとは別に、原因を究明するために、内海さんは(学校設置者の自治体を相手取って)損害賠償請求訴訟を起こされた?

 「(事件から)2年経った後ですね」


 やっぱり裁判まで行かないとわからないと。で、その裁判は勝訴ですよね?

 「勝訴しましたね」


 暴行と平さんの自殺との因果関係を裁判所は認めて?

 「はい。
 ……実際には、ありとあらゆることをやったんですよ。もちろん、初め、学校とも何度も掛け合いました。ところが、全然話にならない。と言うよりも、最後は何も話してくれなくなるわけですよね。何を言っても。
 つまり、事実というのは、当然、何があったかを知って、それが相手方も、世の中も『そうですよ』と認めることだと思うんですよ、事実を明らかにするというのは。
 ところが、ある程度、こちらが一所懸命調べることによって状況がわかってきたんだけど、相手はいっさいそれを認めようとしない。『自殺とそれ(暴行)とは関係が無い』、『わからない』という立場をとっていますね。
 だから、いきなり裁判をしたわけじゃないんですよ。ずっと、やって、やって、やって、結局はこのまま泣き寝入りをするのか、相手を引きずり出すためには、1個人としては民事訴訟という手段に頼る以外、他にないんですよね。
 やるだけやってみて、ものすごく抵抗があったんですよ。つまり、お金を払えという訴訟でしょう? 自分の子供の命にお金を払えということで……。『そんなんじゃないんだけどな……』と。でも、手段としてそれしか残っていないと。泣き寝入りするのか、そこまでやるのかと。
 ……結局、やろうと。一生後悔したくないからと思って、やりましたね。それしか手段が無かった。今もそうなんですけど。
 だから、よく間違えられるんですけど、すぐ親は学校裁判とかやると(言われる)。クレームをつけて、1つ間違えたら『裁判するぞ』とやるって。
 本当にそうなのかって。そんな生半可な理屈でね、地域全部的にまわしてね、勝てないかもわからない、事実が明らかに出てこない状態で裁判を起こせるかって言うんですよ。
 そうじゃないです。つまり、人としての尊厳を賭けて、やるかやらないか。自分がやっていることが正しいと信じられないと、そこまではできないです」


 逆の言い方をすると、行政なり学校なりの体質が変わって、学校で事故や事件があって子供が命を落とすということが起こったら、何故そんなことが起こったのかということを真摯に究明して2度と起こらないようにしようという風に変わっていけば、遺族の方々が裁判に訴える必要もないわけですよね?

 「必要ないですね。
 およそ子供を殺されて、金にしてやろうなんていう親はほとんどいないと思うんですよ。そんな思いは無いですわ。
 よくそんなことを言うんですね、『金を取ろうとしている』と。それは、第3者だから言えることで、実際、自分の子供に死なれてみた時に、金を取ろうなんて気力はとうてい無いですね。
 学校事故とか、いじめも、大抵は子供が大切にされなかったんですよ。非常に粗末に扱われる中で命を落としているんです。死んでもなお粗末に扱われていることに対して怒りを感じているんです。
 せめて、大切に扱われなかったならば、『すまんことだった』と。せめて、その時はできなかったかもわからんけども、後、大切に扱って欲しい。それが、遺族にとっては、少しの癒しになっていくんじゃないかなと。
 子供が大切に扱われなくて、命を落として、死んだ後も本当に粗末に扱われる。『死んだあいつが悪い』みたいな形で。それが許せないことなんです。そこに一番の怒りを感じているんだと思うんです」

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■表に出ないよう処理する手腕が問われる行政マン

 内海さんは公立中学校の先生でいらっしゃって、学校で働いていらっしゃる、教師を天職とされている。にもかかわらず、こういう事件が起きてしまった。学校という組織が、原因とか問題を追及するのではなくて、学校側に責任は無かったと持っていこうとするのは何故なんですか?

 「1つ、はっきり分けていかなければならないのは、通常の学校、(それまでに)そういう事件が起きなかった学校の通常の先生は、そういう意思は無いです。ただうろたえるだけなんですよ。『これで良いのか?』と。だから良心はあるんです。事件当時の校長先生のように。恐らく教育長からの指導だと思うんですよ。その中で揺れ動いているんですね、校長先生もすごく。
 だから、僕も、今も現職の教員なんですけど、この事件があるまで、まさかこんなことになるなんて夢にも思わなかったですよ。
 通常の学校で勤務している時、その時にも教育長から『どうあれ』とか指導を受けますよね、色々。それは、およそこんなこと(沈静化しようと緘口令を敷くこと)じゃないです。これとは全く反対の指導を受けています。全く反対の思考で学校は動いています。善なるものとして、考え、努力するように動いています。
 ところが、一度こんな事件が起こってしまうと、全くそれを無視した別の動きや力で(学校は)動かされていくんですよ」


 その全く別の力というのは、どういうところからどういう方向で出てくるんですか?

 「1つは県のトップレベルからでしょうね。県教委(県教育委員会)ですね。県教委のトップレベルからの指導が入りますね、恐らく。
 で、ある方向を持って、つまりそのやり方としては情報を出さないということなんです、1つは。
 学校の中でそのことに携わるのは数名ですわ。あとは緘口令を敷く形で動かされていくわけです。だから、何が起こっているのかわからない。
 学校の現場の先生も混乱しているんですよ。で、自分は結局その中に入って、それから離れることでしか、つまり関わらないことでしか、自分を守れないんですよ。
 そういう形で動きが止められていって、動けなくなっていくということなんですね」


 県レベルの教育委員会が、傘下の学校で問題が起こった時に『余計なことを言うな』と緘口令を敷いて沈静化という方向に行くというのは全国的にそうですか?

 「傾向としては全部同じですね。
 でも、そんなことをしているとは絶対言いませんね。対外的には反対の発言をします。『ちゃんとやっています』、『キチッとやっています』と。
 でも、実際にやられていることを丹念に、報告書とかを検証していけば、まさにそういう実態が出てきますね。
 今までは出ていないんですよ、それが。唯一、そのことの経緯を知っているのは、県の沈静化をかけた中心人物と、現場の校長とか実務的な数名のレベルの人、あとは被害者、当事者です。外にはいっさい情報が出ていないんですよ。
 だから、世の中には知られていないんです、実態が」


 県教委レベルが、そうやって隠そう隠そうとするのは何故なんでしょう?

 「それが良いとされているからです。つまり、学校の優秀な管理者であるとか、行政マンというのは、行政なんて色々な不祥事とかトラブルがあるんですよね、それを、キチッと問題にならないように対応できる能力というのが評価されるんですよ」


 問題があっても、それをうまく処理しましたというのが優秀な行政マン?

 「表に出ないように処理できるというのが、その手腕が問われるわけですよ。
 だから、よくあるんだけど、失敗が表に出てしまうと言うか、不祥事が出るようなところは、逆に手腕が無いんですね。元から、そっちを向いているんですわ。
 その事件を明らかにして対応することを善とすると、それを優秀だと評価することはないんですよ。
 だから、色々な事件が起きているんですけど、1つの例として、どういう処分を出しているのかということでも、やったことと処分というものには整合性が無いんですよ。むしろ、どういう風に報道で流れたかということと処分とに一番整合性があるんです。そう考えると非常にわかりやすいです、何をしようとしているのかが」

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■本当のことをよく知っているのは被害者と遺族

 内海さんたちは、『全国学校事故・事件を語る会』というのを主催されていますが、内海さんも遺族でボロボロになったとおっしゃっていましたけど、そこで支えになったものがあったんですね?

 「やっぱり同じような経験をした仲間と言うのか、同志と言うのか、それが唯一の支えでしたね。同じ経験をした人と話をすると、『自分だけじゃないんだ』、『自分はおかしくないんだ』ということがわかったんですね」


 今、具体的に『語る会』は、どのような活動をされているんですか?

 「2ヶ月に1回、集会を開いて、今、学校事故・事件で追い詰められている人と言うのか、ヘルプを求めている人の相談を受けたり懇親会をやっています。
 それから年に1回、大体6月なんですが、宿泊の大集会をやっています。先程言った半日の集会では、東京とか東北からだとなかなか難しい。だから宿泊の集会でケアすると同時に、やっぱり外に向かって発信していくという、学校の事故の問題についてシンポジウムをやって、それから色々な発信をやっていますね。
 それと、文科省(文部科学省)に対して、第三者機関の設置とか、第三者機関が本来の第三者機関として動けるような環境の整備の問題とかを請願に行ったり、そういうようなこともやっていますね。
 まだそんなに知られている会ではないと思うんですよ。小さな、小さな、神戸を中心とした会ですし、できて日も浅いですし……。実は、本当に必要なのは、少なくとも色々な主要都市の中に、こういう神戸レベルの会がどんどんできていくと。
 それから、今、僕らは当事者なんですが、実際に、当事者だけではなしに、それを支援するための専門家のグループの組織が絶対に要ると思うんですよね。弁護士のグループであるとか、ケースワーカーのグループであるとか、カウンセラーのグループであるとか、もっと専門的な医療関係、精神科医のグループであるとか。そういうような専門家のグループが要ると思うんですよ。そういうグループの中でサポートしていくとかをしていかないと、本来の救済というのは難しいと思いますね。
 それからもう1つは、今、第三者機関ということが言われますけど、実際、あっちこっちにオンブズパーソンと称するものとか調査委員会とかあるんですよね。ところが、なかなかそれでも事実に迫ることが難しいんですよ。つまり、僕らに圧力がかかったように、第三者機関にも圧力がかかる。だから、よく言うのは、第三者機関は現状ではない方が良い場合だってあると。変にお墨付きみたいになって、全然、別の発表をされてしまうと」


 わけのわからない社会は『そういうことか』と思ってしまうわけですね?

 「そういうことです」


 でも、実態は違うと?

 「はい。
 だから、それを保障する制度とか、つまり環境整備を文科省の責任においてやるべきだと思うんですよ」


 それと、実態を一番よくご存知なのは、内海さんたちじゃないですか?

 「そうです。だからよく言うんですよ。『本当のことをよく知っているのは、当事者なんです』って。『被害者なんです』って。
 でも、言うんですよね。『被害者はうまく喋れないだけなんです』って。うまく喋れないです。非常に色々なことでいじめられて混乱している。世の中も信頼できなくなっている。でも、その中で、本当に実態を知っている……。
つまり、現場に来てくださいと。現場に来て、現場の話をそのまま聞いて、その中から、実際に調査に入っていく。それをしない限り、いかなる有識者を集めてやってみても、この問題については難しいと思いますね」

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