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静岡・NHK取材用ヘリ墜落:発生1週間 ロッド破断、金属疲労の可能性も
◇整備記録など基に捜査−−国交省調査官「1年めどに報告書」
静岡市葵区で9日、オールニッポンヘリコプター(以下ANH)所属のNHK取材用ヘリが墜落し乗員2人が死傷した事故から16日で1週間。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会と県警の調べで、機体後部の棒状のコントロールロッドの破断や、墜落前、死亡した小宮義明機長(当時57歳)が操作マニュアルを基に操縦した可能性があることが既に判明している。事故状況が明らかになる中で、捜査の見通しを探った。【田口雅士、浜中慎哉】
■周辺部の異常が遠因か
破断が確認されたロッドは機体後部のテールローター(後部回転翼、以下テール)にラダーペダル(操縦ペダル)の動きを伝える直径13ミリの棒状のアルミ合金の部品。事故調の福田公爾調査官は「事故状況から考えると、ロッドは上空で破断した可能性が高い」と説明する。
では、なぜ破断したのか。航空評論家の青木謙知氏は「機体後部の他の部品に腐食などの異常があり、ロッドに負担がかかりロッドが金属疲労して破断した可能性はある」と推測する。
青木氏は更に、「機体の製造過程でロッドに傷がついていたり、ロッドの材質を間違えたなども考えられる」と機体の製造・整備段階で破断原因があった可能性も指摘する。
事故機のメーカー、「ユーロコプター社」の本社があるドイツが所属する欧州航空安全庁(EASA)は、ロッドに加え、ロッドとつながり腐食しやすいとされる部品ボールピボットなど周辺の点検を14日、同型機の所有会社に指示している。
■機長の操作にも焦点
県警などによると、重傷で入院中の亀山幸代整備士(33)は任意の事情聴取に対し、「不具合発覚後、操作マニュアルを見ながら(機長が)直そうとした」と証言している。
マニュアルでは、テールが故障した場合、機体の安定を保つため70ノット(時速130キロ)以上の速度で飛行し、不時着場所を探して40ノット(同70キロ)まで速度を下げ、機体が安定するかどうかを確認する。
その上で(1)機体が安定する場合は更に速度を落とし緊急着陸する(2)機体が左右に振られるなど不安定な場合、再度速度を上げ、エンジンを停止させ、竹とんぼのように風圧でメーンローター(主回転翼)を回すオートローテーションができる高度まで上昇する――と示されている。
目撃情報では、墜落前の機体は低速で横滑りするなど不安定な状態で、数回転しながら転落した。小宮機長をよく知る首都圏の操縦士は「速度を下げたが機体が不安定だったため再度速度を上げようとしたが、操縦不能だった可能性が高い」と推測する。
■整備士からも事情聴取
事故調と県警は今後、ロッドの破断面を電子顕微鏡で見たり、押収した整備記録などを基に、破断原因や機体の整備状況について調べる。また、亀山整備士や目撃者から詳しく事情を聴き、小宮機長の操作が適切だったかどうかについても調べる方針だ。福田調査官は「1年をめどに報告書をまとめたい」としている。
12月16日 10時53分
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