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  ▼ 記者の視点
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第三者組織創設に向けた議論が佳境
現場は大筋賛同も課題山積
2007.12.17

 診療行為に関連した死亡(以下、診療関連死)の死因究明と、再発防止策などの提言を行う第三者組織創設に向けての議論が佳境に入った。

 厚生労働省は10月、「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案」を、自民党の検討会は11月、この厚労省案を受けて、医療現場の懸念に配慮した「診療行為に係る死因究明制度等について(案)」をそれぞれ提示した。

 ただ医療現場では、死因究明を行う第三者組織の創設などには大筋賛同しているが、問題が残っているとする意見も多数あがっているという。

 厚労省案によると、診療関連死の死因究明を行う組織として省内に第三者組織を設置。第三者組織の下に、地方ブロック単位で分科会を置き、臨床医・解剖医・看護師などによる調査チームが個別事例の評価を行う。

 診療関連死の届け出制度については、原則、第三者組織が受け付けることとし、第三者組織が刑事事件を追及すべきと判断した場合などには、必要に応じて警察に通報する。医療機関は、第三者組織に届け出れば警察に届け出る必要はないとしている。

 ただ、医師法21条は医師に対し、「異状死を24時間以内に警察署に届け出る」ことを義務付けているため、第三者組織への届け出との整合性を図るために今後も議論を深める。届け出を怠った医療機関には、何らかのペナルティーを科す。このほか、第三者組織は当面は死亡事例のみを調査対象とし、遺族からの調査依頼を受け付ける。再発防止に向けては、第三者組織が全国の医療機関に対して提言を行う。

 また、医道審議会で行政処分を決定する際に、第三者組織の報告書を活用してもらうことを想定している。さらに、弁護士会の紛争解決センターなど民事紛争での裁判外紛争処理(ADR)の活用を図るほか、ADR機関同士の意見交換の場を設置することも検討する。

 刑事手続きについては、第三者組織が警察に通報した事例や遺族が直接警察に相談した事例に対する捜査と、第三者組織での調査との間で整合性を図る仕組みを設けるとした。

◎ 厚労省案に反対意見も根強い

 独協医大の寺野彰学長は、日本私立医科大学協会の「医学振興」第65号で、厚労省案についての問題点を示した意見を掲載した。意見では、十分に時間をかけた慎重な検討の必要性などの原理原則論から詳細な項目まで、多岐にわたる厚労省案の問題点を列記している。

 そのうち、厚労省が今後検討しているという項目などを除き、<1>第三者組織を厚労省に設置すること<2>刑事手続きに第三者組織の調査報告書を活用すること<3>遺族の代表を委員に加えること―の3点についての寺野氏の意見は以下のようになっている。

 第三者組織が厚労省に設置されれば、中立性・公平性を欠くと指摘。また、刑事手続きに第三者組織の調査報告書を活用すれば、医療事故の再発防止にはつながらず、結果的に「責任追及」を目的とされかねないという。そのほか、遺族代表を委員に加えると感情論が入り、死因究明に悪影響をもたらすのではないかと危ぐしている。

◎ 鉄は熱いうちに打つべきか?

 一方、日本病院団体協議会の山本修三副議長は先日の代表者会議後の会見で、厚労省と自民党の提案について、「医学的にきちんと事実を明確にして、再発防止につなげるという趣旨で、第三者組織による調査には賛成。完ぺきなものはすぐにはできないので、小さく産んで、しっかり育てていく姿勢が大事」と賛成の立場を示した。

 福島県立大野病院事件があり、医療側もリスクの高い診療科から逃げ出しているといわれる。こうした中で、「鉄は熱いうちに打て」ということは理解できるが、厚労省には、制度に対する反対意見にもしっかりと答える義務があるだろう。(半田 良太)



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