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妊婦健診の公費負担回数、市町村で差

2007年12月15日

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 妊婦の健康状態を把握するのに欠かせない健診の公費負担が、県内の市町村で進んでいない。厚生労働省は5回分以上の受診料を負担するよう自治体に求めているが、県内でその負担を実施しているのはわずか3町。県平均は2・5回にとどまる。地方交付税で5回分の財源が手当てされているが、交付税総額の削減が続くなど、市町村にとっては厳しい財政事情を背景に実現できないという側面もあるようだ。

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 妊婦は通常、出産までに14回前後の健診が必要とされる。医療保険が適用されないため、診察や体重・血圧の測定、尿検査などで1回約5千円かかる。超音波検査などが加わると計1万円を超える。

 経済的理由などで受診をあきらめさせないように、厚労省は今年1月、それまで2回としていた健診の公費負担を、最低5回(妊娠8、20、24、30、36週前後)に引き上げるよう自治体に通知。地方交付税の少子化対策費で、経費の相当額が増額された。

 しかし、同省が10月末に公表した調査結果によると、県内市町村の公費負担の回数(07年度)は、2〜6回とばらつきがあった=表参照。県平均は2.5回で、全国平均2.8回を下回った。

 県内で最も回数が多かったのは岩泉町の6回。次いで、山田町と一戸町が5回だった。厚労省の基準を満たしたのは、この3町のみで、26市町村は2回分しか負担していない。

 これには、通知が出る前に大半の市町村で07年度当初予算案が固まっていたという事情がある。加えて国が、公費負担に充てる経費を、使い道を妊婦健診に限らない地方交付税で予算措置したため、厳しい財政事情の市町村が予算を他の事業に回したことも影響したようだ。

 盛岡市では年間約2300人が公費負担の妊婦健診を受ける。07年度は4200万円の予算を組んだ。公費負担を5回に増やすには、さらに4500万円の支出が必要になるという。

 市保健センターは、公的負担引き上げの意義について「一度も健診を受けない『飛び込み出産』をつくらないだけでなく、経済的理由で十分な回数の検査を受けられないような格差を埋めるねらいもある」とみる。

 ただ、「必要とされる検査や回数をすべて負担できればいいが、厳しい財政のなか、負担回数を増やせないのが実情」という。08年度は公費負担を少しでも増やそうと、市の内部で調整が続く。

 県内で負担回数が最多の岩泉町には産婦人科がなく、妊婦は盛岡市や宮古市などに通院しなければならない。06年度は計383回の健診経費約260万円を支出した。

 町は「産婦人科はないが、健康な子どもを産んでもらいたい」(町保健福祉課)と、08年度は、全国最多を誇る秋田県並みの10回の負担を目指す。

 厚労省の調査では、県内の17市町村が「来年度以降、増やす方向で検討」と回答。県児童家庭課によると、「回数を増やせない市町村でも、検査内容の充実を図るところがある」という。

 県産婦人科医会の小林高会長は「異常を早く見つければ、正常なお産に近づけるための治療もできる。健診を受けずに手に負えなくなってから受診するのでは、母子だけでなく医師にとってもリスクが大きい」と話している。

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