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【ゆうゆうLife】医療 納得は得られるか−動き出す医療版ADR(中) (1/3ページ)
■見直される初期対応 感情受け止める場を
医療事故の被害者が訴訟に持ち込む理由の一つに病院の初期対応の悪さがあります。最近は、病院側が初期対応を見直しています。医療事故などが起きた場合、患者側と話し合う場を作り、紛争解決につなげる「院内ADR」の態勢を整える病院も出てきました。(佐久間修志)
医療事故で、1歳半のまな娘、笑美ちゃんを失った神奈川県平塚市の接骨院経営、菅俣弘道さん(40)が、病院を訴えなかった理由は、「病院の謝罪があったから」だ。
平成12年4月、胃食道逆流症を起こし、東海大学付属病院(伊勢原市)に入院していた笑美ちゃんは、看護師の点滴ミスが原因で息を引き取った。
病院は菅俣さんに謝罪。小児科の教授は「明らかに自分たちが原因」と涙を流した。葬儀には病院から数十人が焼香に訪れ、後の法事にも院長ら幹部が足を運んだ。
笑美ちゃんが亡くなった後、ひっそりと静まりかえった自宅の居間。好きで壁に張っていた詩が改めて、菅俣さんの目に留まった。
どうぞ神様、この子のためにすばらしい両親をさがしてあげてください
神様のために特別な任務をひきうけてくれるような両親を
神様は、子供を受け止めてくれる両親を選び、両親も子供を通じて使命を知るという内容だ。「笑美の死を意味あるものにしたい」という気持ちが芽生えた。
菅俣さんは、医療事故被害者の集まりに参加し、本を読みあさった。その結果、病院側の真摯(しんし)な対応が得られず、訴訟で苦しむ被害者が多いことを知った。「東海大病院の対応は評価せざるを得ない。この事故は『きちんと謝罪した病院は訴えられない』というモデルケースとして後世に残せる」。心は決まった。
事故から7年。菅俣さんは当時の院長と肩を並べ、医療事故関連の講演に参加する。講演では医師らにこう語る。「最初は誰だって病院を許せない。でも、時間がたち、冷静になったとき、初めの謝罪はきっと生きる」
最近、右目の治療に迷わず同病院を選んだ菅俣さん。「今は他の病院よりも信頼している」