B-CASカード情報をP2Pで流す可能性も
現在出回っているFriioについてはここまでだが、既に第2、第3のFriioが出てくる兆しがある。
Friioの販売元は、数百台だけを販売して雲隠れしたとの説もあるが、関連業界ではさらなる出荷を予測する声が飛び交っている。ある業界関係者は、「次の受注開始に向け準備をしているとの情報がある。2月にかけて、5000台単位のロットで販売される可能性があるのでは」と危機感を強める。5000台というと少ないようにも感じるが、決してそんなことはない。電子情報技術産業協会(JEITA)の発表では、2007年10月に出荷された地デジチューナー内蔵パソコンは2万9000台。その2割近い数量のFriioが本当に出荷されるとなると、とうてい無視できるものではない。BS/CS放送に対応した、Friioの後継機種を準備しているらしいとの噂もある。
さらに恐ろしい、こんな発言もある。「現行のFriioは、きょう体にB-CASカードを挿して中に入っているMULTI2の復号鍵を取り出して使う仕組みだ。今後は、復号鍵をP2Pネットワークで配信するという形態が出てくるだろう」(業界関係者)。こうなると、ユーザーはインターネットにつながってさえいれば、B-CASカードを挿さなくてもスクランブルを解除してデジタル放送を視聴できてしまう。
別の動きもある。「ARIB STD-B25 仕様確認テストプログラム」と称するソフトを放送技術に詳しい一般の個人が開発し、そのソースコードをインターネット上で公開した。Friioの再生/録画ソフトと同様、ARIBの標準規格にのっとりMULTI2の復号処理を行うソフトである。豊富な開発予算も研究設備も持たない個人であっても、MULTI2を復号して地上デジタル放送を受信できるソフトウエアを開発できてしまうということだ。上記のP2P出現を予測する発言と合わせて考えれば、B-CASカードさえ不要になる、Friioより単純な構造の機器が出回る可能性さえ想定しなければいけない。
調査と併せ、抜本的な対策も検討
当然ながら、放送業界も静観しているわけではない。Friioに関しては、放送業界が中心となって、弁護士と協議を重ねながら調査を進めている。「Friioのソフトウエアは、ほぼ日次のペースでバージョンアップが重ねられている。海外ではなく、実際に地上デジタル放送を受信できる日本国内でないと、こんな頻繁なバージョンアップができるはずがない。日本の法制度にも精通していること、この手の製品にしてはマニュアルの品質が高いことから、日本に黒幕がいる可能性が高い」(放送業界関係者)。こちらの調査も進めている。
とはいえ上述のように、仮にFriioの関係者を摘発したり機器のさらなる出荷を差し止められたりしても、今後類似の事件が続発する可能性が高い。B-CASカードの再発行審査の厳格化も、P2Pで復号鍵が出回れば何の意味もなくなってしまう。第2、第3のFriioの出現を食い止めるには、抜本的な対策が必要になる。放送局や機器メーカーなど関連業界でも、抜本策の必要性には気付いており、検討を始めているようだ。
第3報では、パソコンによる地上デジタル放送視聴の現状と、今後の動向について解説する。
■関連記事
第1報:放送業界を揺るがすコピーフリーの地デジ受信機「フリーオ」を入手