スポーツクラブを今年1月に退会、6月に再入会した馬込容疑者。特に頻繁に通うようになったのは10月以降で、そのころ、周囲の目にも明らかな変化がみられていた。
「それまではボサボサの長髪で目つきも悪く、いつもムスッとしとったのに、10月ごろから顔色が良うなって、いつもニコニコ。髪もキレイにセットして、こざっぱりした格好で、毎日のようにピカピカの新車で(スポーツクラブへ)出かけていきよった」
近所に住む住民(64)がこう語るように、馬込容疑者は10月以降、異常な浮かれようだった。
県外の自動車工場に季節社員として働いていたが、スポーツクラブにのめり込むのに合わせて2カ月足らずで退職。愛車も四輪駆動車から新車のワンボックスカーに買い替えた。市職員を定年退職し、年金暮らしだった父親(65)が、退職金2800万円の中から買い与えたものだった。
なぜ、そこまでスポーツクラブ通いに執着したのか。馬込容疑者と殺害された藤本勇司さん(36)の双方を幼いころから知る、地元有力者(67)が証言する。
「5−6年前、『おまえもいい加減、嫁さんでももらわんとな』とちゃかしたら、『オレはオンナに興味ないけん!』と、珍しくムキになって言い返してきよった。そのくらい、アイツは昔から女性に興味を示さず、海釣りと射撃に夢中になっとった。あんなに豹変(ひょうへん)したのやから、やっぱり好きな女ができたとしか思えんかったね」
好意を抱いた女性が誰かは不明だが、殺害された倉本舞衣さん(26)は、スポーツクラブ内で多くの男性会員から圧倒的な支持を受ける美人だった。ホテルで勤務経験のある倉本さんは非常に評判が良く、「いつもやさしい笑顔で、雑談にも気さくに応じてくれました」(クラブ利用者)。
倉本さんが水泳指導をしている時間帯を選んで、馬込容疑者が何度も同じプールで泳いでいたことも確認されており、馬込容疑者の視線の先に倉本さんの存在があった可能性もある。
「ルンルン状態」(近所住民)の馬込容疑者の様子が一変したのが、11月中旬。以前のように目つきが悪く、素行不良な状態に逆戻りしてしまったのだ。豹変の裏に何があったのか。
「倉本さんは会員も含め、複数の男性から好意を寄せられていたようです。きちんと付き合っている彼氏がいたので、しっかりした性格の倉本さんは、丁寧に断っていたのでしょう。『交際を申し込んだけど断られた』と証言する男性が複数います」(県警幹部)
この情報を県警幹部から聞かされた先出の有力者も、その一人に馬込容疑者がいると感じたという。「直感的に、あぁやっぱりなと思いましたよ。少ない親友である藤本くんに対し、『お前らのせいでこうなった』という被害妄想がどんどんふくらんでいったのでしょう」
馬込容疑者の被害妄想は5年前ごろからひどくなり、この有力者も未明に突然訪問されたり、裏庭に銃を持って侵入された経験がある。
馬込容疑者の幼稚園と中学の後輩にあたる男性(35)は「これまでの人生で最大の楽しみになったスポーツクラブで、憧れの倉本さんとの関係に勝手に失望し、被害妄想を起こしたのだと思います」と話す。
絶望のうえ、「助けてくれない」と勝手に思いこみ、親友を道連れに破滅の道を選んだのか。
後輩の男性は「もともと社会性がなく、人の言うことに耳を傾けないタイプなので、一度決めたら猪突(ちょとつ)猛進。しかし、思うように就職もできず、まわりの同級生にも公私に差をつけられ、初めての恋愛も成就できないと知った人生に、もはや耐えられなくなったのではないか」と話していた。