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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成17年(2005年)2月9日(水曜日)
通巻 第1034号
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本号はニュース解説がありません。 ◎ ◎ ◎
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<<今週の寄贈本>>
東中野修道、小林進、福永慎次郎『南京事件 証拠写真を検証する』(草思社)
横田めぐみさんの「骨」はDNA鑑定の結果、真っ赤な偽物と断定されたが、北朝鮮は「あれは日本のでっち上げ」とまだ平然と嘯いている。
新しく供出された、めぐみさんの「写真」は影の不自然さが問題視されて、合成の可能性がある、と専門家が何回も指摘した。一緒に映っていたひとを画面から消したのだ。
日本の抗議に「?」の北朝鮮にはDNA鑑定技術もCG(コンピュータ・グラフィック)のハイテクもない。
さて中国のでっち上げも常習犯だけにたちが悪い。
文豪・魯迅の嫡孫は周令飛である。周は日本留学中に台湾からの留学生と恋仲になり、結婚のため台湾へ亡命した。1982年だった。三ヶ月ほど後にわたしは台北へインタビューに行ったが「日本から来た最初のジャーナリスト」と言われて愕然とした。当時、日本のマスコミは台湾のことを報ぜず、また北京に都合の悪い事態に目をつむった。
周は猛スピードで回想記を書いた。文豪の孫だけあって文章力はなかなかのもの。ところが台湾で、かれの本はそれほど売れなかった。わたし自身、台北の書店街を探し歩き、三軒目でようやく入手。最大の理由は「台湾に事実上亡命したのに『わたしは結婚を選んだのであり台湾に住むのではなく、台湾を旅行中である』と書いたことに台湾人がおこったからだ」と多くの台湾の友人らが言った(拙著『中国の悲劇』に収録)
その周令飛の書いた『北京よ、さらば』(邦訳は産経新聞)で、筆者がもっとも興味を引かれたのは文革中に後難を懼れて、海外クラシック・レコートの貴重なコレクションを庭で叩き割った父親の話ではなく、じつは周が共産党写真部(解放軍画報社)時代に合成写真を片っ端からつくっていた、と証言した箇所だった。
たとえば祖父(魯迅)と一緒に移っていた人達で、そのご共産党主流からはずされたり批判の対象となった人達を削ったり他人と首をすげ替えての合成写真をつくったこと。周自身が毛沢東追悼大会で江青夫人らの写真を撮影したが『社長があたふたと私たちのところへやってきて写真の修整技術を利用して、あの乾板から『四人組』に関係あるものをすべて抹消するように、指示をした』と明記されている。
さて本書は南京大虐殺なるものがあったといまも騒いでいる連中が「証拠写真」と嘯いている写真143枚を特定し、克明に検証したもの。最初から衝撃的で、「証拠として通用する写真は一枚もなかった」という調査結果がでたのだ。
日本の過激左翼マスコミはまだ「南京に入城した日本軍は”多くの”無辜の民を虐殺し略奪行為を働いた」などと国民党のあじビラを読んでいる。
この『南京事件』は三年をかけて、丹念に写真を検証し、いかに合成されたか、でっち上げられたか、あるいは関係のない写真を集めて、キャプションを「日本軍の所為」にしたかを克明に追求した労作である。
本来なら、これは国家が行うべき作業である。日本政府は、外務省は民間の学者らがたちあがって地道な研究を積み重ね、中国によって歪曲されてきた歴史の真実のベールを剥いだ作業を、いまも傍観し冷笑している。
少なくともこの本の英訳作業を予算化し、全海外公館に陳列し、英米欧すべての図書館と大学と、世界中の関連団体に寄贈し、アメリカはじめ重要同盟国の全議員に送るべきではないのか。ついでにアイリスチャンの偽書を文庫にいれた老舗のペンギンブックスにも抗議して、文庫入りに努力して貰おう。
それができない政府が「日本国民の政府」と名乗るのはあまりにおこがましすぎないか。
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(今月の拙論)
(1)「議論が活発化してきた地域構想“東アジア共同体”は危険がいっぱい」(『エルネオス』、2月号)
(2)「ことしの対中国外交は正念場」(『国民新聞』、1月2月合併号)
(3)「クレジットカードが中国に根付く日」(『経営速報』、2月5日号)
(4)「ウクライナの憂鬱」(『自由』、2月号)
(5)「いまさら他人には聞けない“台湾vs中国”まるわかり」(『新潮45』、2月号)
(6)「北京からのガイアツ」(『月刊日本』、2月号)
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(読者の声1)2月6日に都内で開催された“中国の脅威と日本の対応”という日本政策研究センター主催の国際シンポジウムに台湾からのゲスト黄昭堂氏(台湾建国独立連盟主席、総統国策顧問)が流暢な日本語で、次のような発言をされた。
会場は補助椅子をだすほどの盛況で中国の軍事的脅威に対する関心の高さをうかがわせた。
「去年3月の台湾総統選挙に際して、『国民投票』も行われた。私は国策顧問なので陳水扁総統に献策した。「中華人民共和国の独立とその領土を認めるか、どうか」の国民投票にしてはどうか、と。
現在の台湾の憲法(「中華民国憲法」)は1946年に南京で出来た。当時、その領土に台湾は入っていない。なぜなら当時台湾は日本の領土だったから。
したがって国際法上は台湾は日本の領土であり、日本は1951年にできて、翌52年に発効したサンフランシスコ条約でその主権を放棄したのである。
民国憲法には、金門島と馬祖島は入っている。だから中国にそのふたつの島を領有する権原(法源)はある。つまり中台間の領土問題とは国際法上、その二島だけであり、それを返せば二国間の領土問題は解決するはずである。
台湾は国連に加盟したいのに、既に中華民国が加盟国として登録されているから、門前払いだ。陳総統が「台湾共和国」として申請するには、今の中華民国憲法では駄目。それをしたら監察院からお咎めがある。
そこで台湾団結連盟の正名運動はそのために行動しているのであり、憲法を変えないと台湾共和国として国連に申請できないし、加盟しなければ国際社会に認知されない。苦しいことだよ。小国の民として生まれ生きるということは。日本人には判らないでしょうがね」。
このほか、森本敏氏らの講演があった。
(HN生、丸の内)
(宮崎正弘のコメント)黄昭堂先生の話しぶりは常にユーモラスですから、会場の雰囲気も彷彿となりました。大事な論点がこの講演要旨に並んでいます。ご報告有り難う御座います。小生も、この会に伺おうとしておりましたが風邪をこじらせてどうしても伺えませんでした。
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(読者の声2)貴誌2月4日付け「その時、やっぱりお金が動いた」 (1033号)。むべなるかなと思います。
この話には表面的な公式のファイナンスによる土俵際打っちゃりの話だけでなく、背後に 巨額の別列車が献上されたと見るべきでしょう。 二枚腰三枚腰です。
Pさん(プーチン?)も、揺れる内部を強化するために巨きな実弾が必要なのでしょう。日本と付き合っても せいぜい森元総理が娘を日本によんでくれて take care した程度・・・・いかにも迫力不足です。
なんだか 世の中30〜40年前に戻った感じがしますね。無法の国同士は強いですね。 国際政治のルールが BRICsの台頭でチョンマゲ(?)時代に戻った感じがします。文才があれば、小説に仕上げるに十分な想像力があるのですが、残念です。
(TK生、世田谷)
(宮崎正弘のコメント)「別列車」ですか。レーニンの封印列車を思い出しますね。蒋介石の黄金とか、あの時代の壮大獰猛強桿なセンスが戻ってくるわけですか。脱線ながら出来不出来は問わず伴野朗の中国を舞台のミステリーはいずれも面白いですよ。胡桃沢耕二の浪漫主義や陳舜臣の教養小説風がなく、現実のどろどろした駆け引きがからむあたりが。
それにしても「えげつなさ大国」としての中国、ロシアの遣り方は日本が逆立ちしても真似の出来ないことです。
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(読者の声3)ところで最近、宮崎さんのユニークな『某月某日』(日記)がなかなか紙面にあらわれませんね。あれも楽しみのひとつにしているものですから。
(AY生、静岡)
(宮崎正弘のコメント)正月二日に皇居へ一般参賀、そのあと各種各様の新年会が始まり、午前様が数回。日記を書く暇がありませんでした。今月初頭からは風邪をうっかりこじらせ、やはり日記を書く時間がありませんでした。昨日まで鹿児島でした。鹿屋基地で講演し、P3Cオライオンで大隅半島海域の不審舟探索活動を見学させて貰いました。
2月は下旬に三日ほど不在の他、講演旅行が少ないので、筆を進めたいと思います。
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◎宮崎正弘のロングセラー◎
『世界経済のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『中国財閥の正体―その人脈と金脈』(扶桑社、1600円)
『中国のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房、1575円)
『拉致』(徳間文庫、590円+税、以下同)
『ザ・グレート・ゲーム』(小学館文庫、476円)
『ネオコンの標的』(二見書房、1600円)
『いま中国はこうなっている』(徳間書店、1500円)
『迷走中国の天国と地獄』(清流出版、1500円)ほか
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