インドネシアのバリ島で開かれていた気候変動枠組み条約第十三回締約国会議(COP13)が、二〇〇九年を目指した交渉の進め方などを示す行程表「バリ・ロードマップ」を採択して閉幕した。
COP13は、京都議定書の期限が切れる一三年以降の地球温暖化対策の枠組み「ポスト京都」の道筋を話し合う重要な会議だった。
行程表は六つの決議や合意文書からなる。注目されるのは、条約の下に新たな作業部会の創設を盛り込んだことだ。京都議定書から離脱した米国や、議定書で削減義務を負っていない中国、インドなども参加し、交渉を始める合意ができたことは評価すべきだろう。国際的な温暖化対策の新たな枠組み構築に向けた第一歩と受け止めたい。
決議ではほかに、先進国による温室効果ガス削減策強化の重要性とともに、途上国の対策強化にも言及した。さらに洪水や干ばつなど温暖化の悪影響を最小限にするための途上国への資金援助強化や、技術移転の重要性も指摘している。
成果の一方で、各国の立場や利害の対立があらためて表面化した会議ともなった。最大の争点となったのは、温室効果ガスの削減目標だ。「先進国は二〇二〇年までに一九九〇年比で25―40%の排出削減」「二〇五〇年までに半減」など、草案にあった削減数値は米国などの反対ですべて削除された。
本会議では、途上国に対し先進国に近い努力を求める米国に途上国側が反発し、会議が再三中断するなど紛糾した。行程表は、合意を優先した妥協の産物ともいえる。
今後はこの行程表を踏まえ、実効性のある温暖化防止策の中身を具体的に詰めていくことが肝要だろう。しかし、新たな削減目標、削減方法となると各国が目指す方向性はばらばらで、交渉は難航が予想される。
今後の交渉では発展途上国の削減の進め方も重要になる。経済発展が著しい中国などの大排出国と、国内に多くの貧困層を抱えるアフリカの後発発展途上国では国情が違い、同じ努力は要求できまい。省エネ技術など排出削減の手段を持ち、資金も豊かな日本をはじめとする先進国が、率先して大幅な削減を進める姿勢を示さなければ、途上国はついてこないだろう
新設の作業部会は〇八年四月までに初会合を開き、〇九年に新たな枠組みをまとめる予定だ。来夏には北海道で洞爺湖サミットが開かれ、日本は議長国の役割を担う。温暖化防止に対する毅然(きぜん)たる戦略を打ち出さねばなるまい。
最高レベルの防衛機密であるイージス艦中枢情報の流出事件で、神奈川県警と海上自衛隊警務隊は、「流出源」とされる海上自衛隊の三等海佐を逮捕した。
日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反の容疑である。同法の適用は一九五四年の施行以来、初めてだ。日米安保体制の根幹を揺るがしかねないずさんな情報管理、国防を担う防衛省の綱紀の緩みを内外に露呈した深刻な事件といえよう。
事件は今年一月、海自二曹の中国人妻が入管難民法違反容疑で逮捕され、自宅を捜索した際、イージス艦中枢情報の資料を記録したハードディスクが見つかったことで発覚した。
イージス艦は、世界でも最高の防空能力を持つ艦艇だ。資料には高性能レーダーと大型コンピューターを組み合わせ、敵のミサイルや航空機など十以上の目標を同時に撃ち落とす米海軍開発の「イージスシステム」に関するデータなどが含まれていた。秘匿性が高く、日米が「特別防衛秘密」と定めていた。
三佐は二〇〇二年八月、イージス艦で防空システムを扱う幹部隊員の教育用資料をCDに記録して持ち出し、第一術科学校の教官に送った。それがコピーされ海曹士クラスの隊員にまで拡散したという。いつ外部に漏れても不思議ではない機密管理に対する認識の甘さだ。首脳部の監督責任も厳しく問われよう。
守屋武昌前防衛事務次官の汚職事件を受け、政府は「防衛省改革に関する有識者会議」を発足させた。情報漏えい対策の徹底も大きなテーマの一つだ。秘密保全の抜本策ととともに、緊張感の欠如した防衛省の体質改善、意識改革が何よりも急がれる。
(2007年12月17日掲載)