サイエンス

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

診療報酬改定:0.38%引き上げ 微増、効果に疑問符 勤務医に魅力乏しく

 政府・与党は17日、08年度診療報酬改定で、医師の技術料など「本体部分」の改定率について、0・38%増額させることを決めた。福田政権になって、官邸主導のくびきを解かれた与党が次期衆院選をにらみ、地域医療の立て直しを求める地方の声に応えて、渋る財務省を抑えた。ただ、増額幅が小さいうえ、診療報酬による医療政策誘導には限界もあり、効果は未知数だ。【吉田啓志】

 本体部分は、構造改革路線を掲げた小泉政権下の02年度改定で、史上初のマイナス(1・3%減)となった。04年度は据え置かれたものの、06年度は再び1・36%の減。一連の医療費抑制策は勤務医の過重労働につながり、これが医師不足を招く一因となった。

 その揚げ句、地方や医療機関からは「もう限界」との不満が沸き起こり、7月の参院選を通じて支持者から突き上げを食った与党も重い腰を上げた。

 ただ、増額を可能にした要因は、財務省が求めていた、中小企業の会社員が加入する政府管掌健康保険の国庫負担削減(約1000億円)にメドがついたことだ。これで「08年度の社会保障費の伸びを2200億円抑制する」との閣議決定を守れるようになり、本体部分の減額が不要になった面が大きい。

 政管健保の国庫負担削減分は、大手企業の社員らが入る健康保険組合などが支援金を出し、穴埋めする。08年度のプラス改定は、大企業の社員や公務員の持ち出しによって実現すると言える。

 それでも、国民医療費の総額は33兆円に達するのに対し、診療報酬0・38%増というのは国庫負担ベースで約300億円増にとどまる。医師不足が目立つ産科、小児科の勤務医の待遇を改善し、開業に走る医師を病院につなぎとめるのが増額の大きな狙いだが、「1%未満では増額アピール以上の効果は薄い」(厚生労働省幹部)のも実情だ。

 さらに、診療報酬を受け取るのは医療機関。勤務医にどう配分するかは経営者の裁量で、そこに国が口を挟む余地はない。

 03年度から、患者の医療費の自己負担割合は原則3割となった。これは医療機関が受け取る診療報酬の3割を、患者の窓口負担でまかなっていることを意味する。つまり、勤務医の待遇改善を意図して病院の診療報酬を増やすと、病院に行く患者の負担はその分今より増える。

 負担が重くなれば、政府の想定以上に患者の病院離れが進み、勤務医の収入増という当初の思惑とは逆のことも起きかねない。医療費抑制策として患者負担を増やしていったツケで、次第に政策実現を診療報酬に頼ることは難しくなっている。

毎日新聞 2007年12月18日 東京朝刊

検索:

サイエンス アーカイブ一覧

ニュースセレクトトップ

エンターテインメントトップ

ライフスタイルトップ

 

ヘッドライン

おすすめ情報