公立病院の「赤字」360億円──近畿06年度末18%増、独法化など検討2007/12/18配信
近畿の自治体が運営する公立病院で、実質赤字を示す「不良債務」の総額が2006年度末で360億円に上ることが17日までに分かった。05年度比で18%増えた。医師不足で患者離れが進んだことや診療報酬引き下げで経営が悪化している。経営改善のため、独立行政法人化など新たな経営形態の検討を始める病院が出てきている。
病院会計でいう不良債務は、現金のほか預金や未収金など現金化しやすい資産をすべて返済に充てても残る負債のこと。病院を経営する2府4県と4政令市、80市町のうち、不良債務を抱える自治体は22に上り、05年度から3自治体増えた。 不良債務の増加は、医師不足による患者の減少と診療報酬引き下げが主因だが、「団塊職員の退職手当が響いた」(和歌山県有田市の有田市立病院)ところもある。政府・与党は17日、医師の技術料などに当たる「本体部分」の診療報酬を0.38%引き上げる方針を固めたが、収益改善の効果は不透明だ。 深刻なのが大阪。大阪市は前年度比10.4%増の128億円の不良債務が発生。大阪と堺の両政令市を除いた大阪府内では池田をはじめ、泉大津、柏原、松原など計7市で不良債務が発生。総額も56億円と05年度の26億円から2倍以上に増えた。 自治体ごとに一般会計から病院会計への補てんの基準が異なるため単純な比較はできないが、財政悪化もあり、病院事業の赤字補てん額を抑える自治体は多い。 奈良県大和高田市の市立病院では、産科の医師不足で入院制限をしたため、病床利用率は80%まで下がって収益が悪化。このため一般会計から病院会計への繰り入れを求めたものの、市の財政が厳しいため繰入金は要求額の半分にとどまり、不良債務が発生した。 同病院は病院会計以上に収益管理が求められる独立行政法人化など経営形態の変更を検討している。 こうした病院の先駆けになったのが大阪府の病院事業。05年度は64億8000万円の不良債務が発生したが、昨年4月、独立行政法人「大阪府立病院機構」の発足を機に06年度は52億7000万円まで減らした。手術件数が増えたため、患者1人当たりの平均診療単価も増えた。事務職員の削減など経費を削減した効果も表れた。10年度までに不良債務の発生をゼロにする目標だ。
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