登山のテクニック

キャンプのかんたんロープワーク
●画像とコメントが重なる場合などは「更新」ボタンをおしてくださいネ。


いまはエコロジーブームで自然にローインパクトが合言葉ですから、登山やキャンプなどアウトドァ・スポーツをする人にとってとりまく環境は厳しいですよね。その反面キャンプは一度装備を購入したら意外と安上がりに行えるレジャーでもあるので、全然エコロジーとかに無関心で普段のライフスタイルをアウトドァな環境でも実行するキャンパーが多いことも事実です。

このページはキャンプに使うロープワークで @簡単であること  A自然にローインパクトなこと を目的に書こうと思います。ここでいう「簡単であること」というのは、いくつもの結び方を覚えるようなことはせずに最小限知っておいたら良い結び方ということです。

○インクノット(クローブヒッチ)

いまクライミングの世界ではこの結び方と8の字結びの2種類でロープワークを行います。結びを確実にこなせば動かず、締まりすぎず、そして必要なくなったら解きやすいのが特徴です。


互い違いに2つの輪を作ります


黄色いラインのようにモノを入れます



最後に両方の端を引っ張って輪の部分の緩みを無くします。互い違いにロープが出ているところを確認してください。

この結び方を色々なケースで応用します。

インクノットの応用/ロープを樹木に結ぶ

ここのイラストでは全てわかりやすく樹木に対してそのまま巻いていますが、実際は雑巾やタオルなどを樹木に巻きつけて樹皮を痛めないような配慮をしてからロープワークをします。


立ち木に1回転巻きつけます。巻きつけたロープは張っているロープ(水色)の上になるようにします

さらにもう一周巻きつけます。今度は張っているロープ(水色)の下に来るように巻きつけます

さいごに斜めにクロスして巻きつけられたロープの内側を通せばインクノットになります。

仕上げにバックアップとして張るロープを3重ほど巻いて、そのロープの中に末端を通します。

矢印の部分の間隔はなるべくなら狭いほうがいいです。ここではわかりやすいように間隔開けて描いています。

登山道や植物園などでは杭とロープで張られた立ち入り禁止の区域があります。杭に巻きつけているロープをよくご覧なってみると大半がこの方法で巻きつけています。E図

この方法で木から木へロープを渡して、物干しやツエルトを張るようなロープの張り方はこんな風です。最初に巻きつける片方は上図の方法です。そしてロープを張ってからもう片方を固定する方法です。


ロープをピンと張ってから、木に2重に巻きつけます。これでとりあえずロープと木の摩擦抵抗が生じてロープは緩みません。そして3回目に巻いたロープの内側に末端を入れて締め付けます。

余った末端は張ったロープに3重して2つの輪の中を通して締め付けて固定します。

完成図。この張り方はどちらも結びはしっかりしているのでロープの上に人が乗っても結び目は緩みません。ただし実際はキャンプで使うロープやクライミングのロープはナイロン縫製の伸縮する性質を持ったロープなので堅牢に張ったとしても人が乗るなど必要以上の加重をロープに掛けた場合は伸びてたわみます。

※ロープを堅牢に張らなくても、物干しができる程度で良い場合は、より簡単な方法があります。

○トゥー・トゥー・ヒッチ
  この結び方の特徴は張り綱に柔軟性があるので、テント、タープなどを張る結び方にも良い結び方です。風などで張っているシートやタープなどがいろんな方向へ動くのに連動して柔軟に対応してくれます。

最初は2重に巻きつけるところは同じです。

次に余ったロープは張ったロープに対して、上図のようにターンを重ねながら戻していきます。最低でも4度か5度くらいはターンさせます。

4・5回ターンを重ねながら戻したロープの最後は、戻したポイントをくっつけておくだけで緩むことはありません。

完成図
ターンを繰り返したロープの細長い隙間にモノを吊るすと横へずれないで使えます。

この結び方の応用例@

シートの張り綱を立ち木に固定します。
この結び方の応用例A

少し長めのロープを使えばツエルトも設営できます。

この結び方の応用例B
カヌーなど長いものを車に積載する場合には前後に張り綱をします。このときの結び方は走行中前後に風を受けるカヌーに柔軟に対応できるこの結び方がいいようです。


●インクノットを利用して熊笹などを束ねてシートを張るアンカーにする方法

応急の際、樹林帯でのキャンプ(ビバーク)の場合は、周りに熊笹などが有れば、笹をインクノットで束ねてアンカーにしてテントを設営したり、フライシートを張ることが出来ます。

インクノットの応用その2(包み込み結び)

この方法を使うといろんな場合に使えます。基本的な考え方はモノをシートなどで包み込んでインクノットで結ぶということです。
シートなどに石・砂・雪塊などを入れてテルテル坊主のように包み込みます。ゴミ袋などでもOKです。
このしばる部分にインクノットを使い締め付けます。

●応用1 フライシートなどの張り綱の部分が切れてしまった場合、シートを引っ張る基点にします。
                          
ペグの使えない場合や、キャンプサイト保護の観点からペグをあえて使わない場合の方法として、ゴミ袋などを利用して石ころ・砂・雪などを入れて、両端を輪にした張り綱でインクノット結びでペグ代わりのアンカーにします。(上図)


●応用2 シートで怪我人を包み保温する

このインクノット包みの方法は負傷者をシートで包み込んだあとに
負傷者をロープで締め付けることなくシートのみを縛る方法に使います



●応用3 負傷者をレインウェアとザックを併用して背負う方法に利用する

@レインウェアの袖をザックのストラップ(赤色の部分)に結びます。結び方は一重結びでOK。

Aレインウェアの両脇部分にゴルフボールくらいの大きさの石を包み込んで、細引き(細い紐のこと)かスリングなどでインクノット結びで固定します。





B石を包み込んでインクノットで結んで余ったロープが重要で、負傷者をレインウェアで包み込んだあとに、ザックの首にあたる部分に結び付けます。

C完成図






○テントを張る

テントは目的の場所に応じて使い分けられればベストです。日本アルプスのような山のキャンプサイトでは、石がゴロゴロあるようなところでしたらどのようなテントも設営可能ですが、稀に砂地に石も何もないような場所でのテント設営になるとテントにフライシートが密着しているタイプのテントのほうが設営しやすいです。画像@
画像@
左図、このタイプのテントはフライシートがテント本体と密着しているタイプ。
フライシートの四隅をテント本体のポールにかけるので、フライシートの張り綱を使用するところは前後左右の4ヶ所で、最低限なら前後のみの張り綱だけでもOKです。
このタイプのテントのデメリットなところは外にモノをおくスペースが少ないことです。
画像A
このタイプのテントはフライシートの全てをテント本体から離して張り綱を使用しなければならないタイプ。前後左右斜め四隅で8ヶ所張ります。このタイプのテントはフライシートも大きくて外に雨露をしのげる物置スペースが確保できるメリットがあります。またテント本体に結露することもあまりなく居住性は快適です。デメリットはフライシートを上手く張らないと、フライシートとテント本体の間のスペースに風が入り込みます。

現在市販されているテントの形はあまり違いはありませんが、大きな違いとしては入口の位置と構造、そしてフライシートに違いがみえます。フライシートはテントの本体に密着しているタイプなのかそうでないかです。
余談ですがゴアテックスなどの素材を使ったテントはフライシート無しで設営・生活できそうですが、フライシートがないとテントを開口する際に雨が入ってきますからゴアのテントでもフライシートは必要だという考えが一般的です。

私はテント本体の四隅の固定はしません。テント内に物を入れておけば動くことはあまりないですし、強風に頂上まで往復留守をする・・・・などといったときはポールを抜いてテントをペシャコにして上から石や雪山なら雪で重石をして留守にします。

●張り綱を石で固定する

テントの張り綱の先端は下の図のようにループ状に結んでおきます。輪の直径はご覧になっている実物大でOK。

予め作った輪の中に、張り綱を下の図のように入れていきます。この黄色い空間に石を入れます。

完成図。最終的な張り綱の長さ調整は自在で行う。


かれこれ10年以上テントやシートなどを張るのに「ペグ」を使ったことがありません。私の所属した山岳会ではこれが常識でした。ペグの分だけ軽量化・・・という考えもあるでしょうが使わなくても四季の山々で不自由しませんでした。
ペグの使用はキャンプサイトを掘り起こすようなものであまり感心しません。またそれがないとテントが張れないというのであれば設営技術が貧弱です。ペグの使用は山麓の重機を使って人工的に作られ均された管理キャンプ場・オートキャンプ場などで使う程度にしたいものです。
また雨の多い季節にテントの周りに排水路を掘っているパーティーもいますがこれも愚の骨頂。学生の山岳部などはスコップで深さ4・50センチの立派な溝を掘っていることもあります。山に来て快適を求めることは自然にはダメージになということを考えていないんですね。まずは人間ありきの発想です。山小屋を利用するにしても快適な山小屋であればあるほど利用者の目に見えない部分で周りの自然に負担を掛けています。ゴミも山小屋で処分してくれるものだろうと置いていきますが、リサイクルしない可燃物は燃やして灰・炭を山中に埋めます。おにぎりや弁当を包んでいた銀紙(ホイル紙)やプラスチック製品も燃やしますが燃えかすの塊となってこれも埋めています。登山者に見えない山小屋の裏地には何十トンという廃物が埋められています。ひとりひとりが山のことを考えて自分のゴミは全て持ち帰るようになれば多少なりともダメージが少なくなります。山では快適を求めず貴重な体験としてできるだけ不自由をすることを心がけたいものだと私は考えています。

最後に、ロープワークは本やこのようなページを見て学ぶものでしょうが実際にやってみて手順を覚えこまないと、いざというときにはできません。何度も使って反復練習をしていつでも使える技術にしてください。


戻る
前へ
次へ