◇「地域文化の発展担いたい」--金成子(キム・ソゥンジャ)さん
酒屋の店先で立ち飲みする「角打ち」に引かれ、05年に設立された「北九州角打ち文化研究会(角文研)」の事務局長を担う。
男くささが漂う角打ち、女性から見た魅力は? 「『安近短』です。安くて財布に優しい。人と人との距離が近く、素のままの触れ合いができる。立って飲むから時間も短く、早く帰れる。また店主は地域に根ざしていて、北九州にまつわるさまざまなことを教えてくれる」
出身は韓国・釜山。89年に留学で来日し、福岡市の雑誌社に就職した。02年に北九州市に移り、現在は北九州支社長を務める。パーティーの2次会で体験した角打ちで「安近短」を実感。仲間たちと角文研をつくった。
角打ちを楽しめる市内の酒屋は、角文研が紹介しているだけで約80。北九州が製造業の街として発展した時代、工場では8時間ごとの3交代制が当たり前で、早朝や日中に仕事を終える工員向けに、酒屋で飲めるスタイルが広まったらしい。
ただ「廃れるかもしれない」との予感もある。ある酒屋から「店を大きくしてもらった恩返しとして続けている。実はもうからない」と明かされた。角文研発足後に閉じた店も少なくない。
今秋、市の新しい基本構想をつくる審議会の委員に就いた。北九州への愛着を感じるからこそ、市民には殻に閉じこもってほしくないと願う。2~3年前、仕事先の男性から「よそ者に北九州のことがわかるわけがない」と言われ、「取り消して下さい。北九州を愛する気持ちでは、あなたに負けていない」と反論したことも。
「女性のおしゃれ心をくすぐるエリアが活気付けば、さまざまな消費が生まれ、華やかな文化が育つ。それに角打ちのような地域文化が重なれば、北九州市の魅力は高まる」。新構想にも「よそ者」の視点を生かし、提言するつもりだ。【平元英治】
〔北九州版〕
毎日新聞 2007年12月17日