在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)大阪府本部が入る「大阪朝鮮会館」(大阪市東淀川区)の競売入札が17日、大阪地裁で始まった。売却基準額は2億2389万円。在日朝鮮人系の企業などが買い戻す可能性もあるが、落札者次第では他の地方同様に府本部が移転を迫られる。大阪では、全国最多の約14万人の在日朝鮮・韓国籍の人々が暮らす。「在日」の戦後史に重きをなしてきた施設の行方が、注目される。【遠藤孝康】
◆将来の領事館
71年ごろの建設で、地下1階、地上6階で延べ約3600平方メートル。2、3階の朝鮮総連府本部では、職員約20人が働く。老朽化が激しく、地裁の評価で耐用年数はあと3年。冷暖房は約10年前から動かないという。
総連関係者の間で、「会館は、(日朝国交正常化後の)将来の領事館」だった。ある幹部は「建設当時、新幹線から際だって見える会館は関西の在日社会の象徴だった」と振り返る。
◆移転か買い戻しか
97年の朝銀大阪信組の破綻(はたん)が、競売の原因。同信組の融資先だった「共栄商事」からの債権回収を進める整理回収機構が、融資の担保だった会館の競売を申し立てた。東京都文京区にあった都本部は4月、都内の会社が落札し墨田区に移転。名古屋市の愛知県本部も、落札した不動産会社と移転交渉が進む。
大津市の滋賀県本部は、昨年11月の競売で落札した在日朝鮮人系企業が代金を納付せず、再入札が行われた。
大阪市内の不動産業者によると、会館のある土地は新大阪駅に近く、マンションやビジネスホテルの建設に適している。落札価格は3億~4億円になる可能性もある。
◆「大きな痛手」
東成区の在日韓国籍の女性(48)は「総連は同胞の生活の支えになっている。拠点の会館がなくなれば在日にとっては大きな痛手だ」と話した。大阪市立大大学院の朴一教授は「バブル時代に総連関係者の一部がマネーゲームに走り、そのつけが回ってきた」と批判。その上で、「会館は多文化共生への取り組みも担ってきており、慎重に対応してほしい」と話した。
毎日新聞 2007年12月17日 大阪夕刊