師走の公演に充実した演目がそろった。
昼の最初が「鎌倉三代記」。三津五郎が藤三郎を軽妙に、高綱となってからは勇壮に演じる。仁王だすき姿が珍しい。福助の時姫がつややかで、橋之助の三浦之助に悲壮感がある。
次が「信濃路紅葉鬼揃(しなのじもみじのおにぞろい)」。能「紅葉狩」が題材の新作舞踊。「鬼揃」の小書き(特殊演出)を取り入れ、鬼女(玉三郎)が上臈(じょうろう)を従える。海老蔵の維茂(これもち)に柔らかみがあり、勘太郎の山神が軽快だ。
最後が「筆屋幸兵衛」。勘三郎初役の幸兵衛に、実直な男が思いつめた風情が出た。取り乱しての花道の入りが鬼気迫る。市蔵の差配に味わいがあり、猿弥、弥十郎、鶴松、歌女之丞(かめのじょう)、芝喜松(しきまつ)らが的確な演技を見せる。橋之助の三五郎、獅童の巡査、福助のおむら。
夜の最初が「寺子屋」。勘三郎の松王がいい。セリフに抑制を利かせ、子に対する情を十分に出した。福助の千代ともそろう。海老蔵の源蔵と勘太郎の戸浪は、若い夫婦らしい必死さがうかがえる。市蔵の玄蕃(げんば)がうまい。
続いて三津五郎の杵造と橋之助の臼造の息の合った「粟餅(あわもち)」。
最後が「ふるあめりかに袖はぬらさじ」(有吉佐和子作、戌井(いぬい)市郎演出)。玉三郎が気が良くてお調子者の芸者、お園をいきいきと見せる。七之助が亀遊にはかなさを出し、獅童の藤吉にいちずさが見えた。勘三郎の岩亀楼主人の商人ぶりもみもの。三津五郎、福助、橋之助ら主だったところが脇で顔をそろえる豪華な一幕。26日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2007年12月17日 東京夕刊