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中国「売国奴を美化」と批判 金獅子賞の歴史映画で激論

2007.12.17 18:04
このニュースのトピックス中国

 抗日戦争期の中国を舞台に、今年のベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した台湾出身のアン・リー監督の「ラスト、コーション」が中国で封切られた。しかし、日本に協力する「漢奸(売国奴)を美化し歴史を歪曲(わいきょく)」しているとの批判が上がり、映画支持派との間で論争が白熱している。

 映画では、主人公の女性が日本に協力する情報将校を暗殺しようと接近、肉体関係を結ぶが次第に愛が生まれる。使命と愛欲の間で揺れる男女の心理を鮮やかに描いた。

 中国では過激なベッドシーンなど約十二分間がカットされて十一月に封切られた。だが、情報将校が人間味ある人物として描かれていることを、作家の閻延文氏らは「漢奸が民族を売り、抗日活動家を虐殺する残虐性を覆い隠している」と歴史的角度から批判。漢奸を好きになるというストーリー展開が「抗日活動家や民族精神を侮辱している」とした声も多い。

 ある文学研究者はこうした批判が出る背景について「中国ではマルクス主義的な階級闘争史観や伝統的な儒教道徳などの影響で依然、歴史上の人物像を善玉、悪玉に単純化するのを好む傾向がある」と分析。一方で価値観の多様化も進んでおり、「映画は漢奸を人間的に描いただけ」「芸術を政治と結び付けるべきでない」と反論する映画擁護派も少なくない。

 中国では、従来の「極悪非道」といったイメージを打ち破る人間的な日本兵を登場させた映画「鬼が来た!」(二〇〇〇年)が「日本軍人を美化した」などとして上映禁止となったこともある。(共同)

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