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2007年12月17日

◎輪島の永井豪記念館 漫画と朝市は似合うかも

 輪島市は、同市出身の漫画家永井豪氏の記念館を観光名所「朝市通り」の一角に建設す る方針を打ち出した。幅広いファンを持つ永井氏の業績と、能登の素朴な風土を象徴する朝市との組み合わせは、意外に似合うかもしれない。これまでの能登のイメージを転換させる可能性も期待できるのではないか。また、世界的に知名度の高い永井氏だけに、能登空港から北陸を訪れる台湾の観光客を呼び込む効果も見込めよう。

 同市では、今年秋に永井氏も招いて「マンガキャラクター仮装コンテスト」を開催した ように、記念館の建設に向けた地ならし的イベントも始まっているが、県や奥能登地域も加わって、一体感のある誘客策を今から考えていきたい。

 永井豪記念館の建設については、輪島市が一昨年からプロジェクト推進室を設置し、永 井氏の講演会のほか、漫画家水木しげる氏の記念館のある鳥取県境港市から関係者を招いて事例研究するなどして可能性を探ってきた。

 二〇〇三年に開館した水木しげる記念館は、今年十一月に入館者が百万人を突破し、「 妖怪検定試験」も実施されるなど、妖怪をキーワードに幅広い誘客戦略を展開している。同じ水産加工の港町という共通項もあって参考になろう。

 輪島市でも、昨年から永井氏の漫画のキャラクターを使用した案内看板を設置しており 、記念館建設に乗り出せば「漫画の町」としての顔も発信できる。伝統ある輪島塗や朝市の風情を守っていくべきとの声もあるようだが、輪島塗にも世界展開に向けて従来の型を破る斬新な試みもみられるようになってきた。町づくりに伝統と新機軸を融合させる努力も必要だろう。

 能登空港に降り立った台湾からの観光客が、朝市に足を運ぶのも定番コースとなってい る。若い人の中にはアニメなどの日本の流行に関心を持つ「哈日族(ハーリーズー)」と呼ばれる人たちが増えている。永井豪記念館の整備は台湾からの新しい客層の開拓にもつながろう。具体的な内容はこれからだが、展示に希少性を持たせると同時に、氷見市にある漫画家藤子不二雄A氏の関連品を集めた「潮風ギャラリー」と連動した誘客策も今後探っていきたい。

◎証券優遇税制延長 市場育成へ恒久化が必要

 与党税制調査会が決めた証券優遇税制の二年延長は、欧米に比べて遅れている株式市場 の育成に必要な措置だ。一部に「金持ち優遇」の批判もあるが、株式や投信の購入を増やしているのは、年収四百万円から五百万円の中所得層である。リスクを承知のうえで、自国の株式を購入する投資家を支援していく必要がある。数年ずつ先延ばししていくような延長は今回で終わりにし、次回の見直しでは恒久化を実現してほしい。

 与党税制改正大綱で、10%の軽減税率を〇九年一月から二年間、延長することが決ま った。株式譲渡益は年五百万円、配当は同百万円をそれぞれ上限とし、株式譲渡損益と配当を相殺し、税負担を減らす損益通算も認められた。

 優遇税制というと、投資家だけが得をするように思われがちだが、市場に集まる金は、 企業活動に必要不可欠な資金であり、私たちの年金資産なども運用されている。証券市場が変調をきたせば、日本経済の足元もあやしくなる。両者は表裏一体の関係にあると考えてよい。

 日本の市場は企業間の株式の持ち合い解消が進んだ関係で、外国人投資家の比率が増え ている。巨大なヘッジファンドが運用する資金は、ときに投機的な動きをして市場をかき乱すことがある。国内に一千五百兆円もの個人金融資産がありながら、株式と投資信託を合わせた残高は12%足らずに過ぎず、自国の市場の主導権を外国人に握られてしまっているといわれる。国内の金融資産の一部を、株式市場へ向かわせる流れを意識的につくり出し、パイを大きくしていかねばならない。軽減税率は、そのための最も効果的な誘導策といえるだろう。

 今、税率を20%に戻せば、一時的に税収は増えるかもしれないが、投資意欲の減退で 市場規模まで小さくなりかねない。それより10%を維持し、市場の育成を後押しした方が将来的に日本経済のプラスになる。

 本来なら株式や預金など金融資産を一つにして損益通算できる金融一体課税への移行が 望ましいが、納税者番号の導入が前提となるなど課題も多く、一朝一夕にはいかない。当面は、軽減税率を恒久化し、市場拡大に努める方がより現実的だろう。


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