今国会の会期が来年一月十五日まで三十一日間、再延長された。衆院本会議で民主党など野党四党などは反対したが、今国会最大の焦点である新テロ対策特別措置法案を成立させたい自民、公明両党などの賛成多数で決まった。
会期が年をまたぐ「越年国会」は十四年ぶりだ。海上自衛隊によるインド洋での給油活動を再開するための対テロ新法案は衆院を通過したものの、野党が多数を占める参院では審議が難航している。
会期の再延長は、法案が参院で否決されても衆院で三分の二以上の賛成で再議決して成立させる覚悟を政府・与党が固めたことを意味する。参院が法案を受け取ってから六十日以内に採決しない場合は、「みなし否決」規定で再議決が可能となる一月十二日以降に延長幅を設定したのが強い決意の表れだろう。
福田康夫首相は今国会で新法案を成立できなければ内閣の求心力が低下するのを恐れ、不退転の意思を示したとされる。会期再延長で新法案の審議はいよいよ大詰めを迎えた。再議決の際、野党は福田首相の問責決議案の提出をちらつかせる。越年国会は衆院解散・総選挙含みの緊迫した展開となろう。
参院第一党の民主党の対応が注目される。審議引き延ばしで会期切れ廃案に追い込む選択肢も視野に入れていたようだが、これで不可能になった。「みなし否決」となれば、参院の存在意義を問われるとして、いずれかの時期に採決し野党の反対で否決する方針という。
採決は当然だろう。参院で意思表示をしないと無用論が高まるのは確実だ。徹底的に議論を尽くしたうえで、結論を出す必要がある。
給油活動再開については、集団的自衛権との関係で反対世論は根強い。各種調査でも賛否はほぼ二分し、国民の間で広く支持が得られているとは言い難い。単に給油活動の是非だけでなく、日本がなすべき「テロとの戦い」はどうあればいいのか、国際的な平和貢献活動にどうかかわっていくのか、など議論を深めるべきテーマは多い。
国会再延長に反発する野党は、防衛省疑惑に加え急浮上した「宙に浮いた年金」問題への政府対応などをめぐり対決姿勢を強めている。衆参の委員会で首相らが出席する年金問題の集中審議などを求める考えだ。
追及は徹底すべきだが、対テロ新法案の審議とは別物であることを肝に銘じてもらいたい。新法案と絡めた政治的駆け引きにとらわれて国会が空転するようだと、国民の理解は得られまい。
長崎県佐世保市のスポーツクラブで、男が散弾銃を乱射し、女性水泳インストラクターと居合わせた同級生の男性を殺害し、水泳教室の児童らにもけがを負わせる事件が起きた。
男は目出し帽などで顔を隠し、子ども向けの水泳教室が開かれているプールサイドでも無差別に発砲している。子どもにまで銃を向けた残酷さに強い怒りを覚える。
佐世保署の捜査本部はクラブ会員の三十七歳の無職男の犯行と断定して捜していたところ、翌朝になって男の自宅近くの教会敷地で死んでいるのが見つかった。そばに散弾銃が落ちており自殺とみられる。捜査本部は殺人の疑いで被疑者死亡のまま送検する方針だ。犯行動機など全容解明を急ぎたい。
問題は所持許可を得た散弾銃で無差別に発砲していることだ。長崎県警によると、男は「狩猟とクレー射撃」を目的に、散弾銃三丁と空気銃一丁の所持許可を得た。銃刀法では所持しようとする場合は、厳しい要件を定めており、手続きは煩雑だ。警察署による身辺調査もあるが、県警は審査は適正で、問題は見つからなかったとしている。
しかし男は、所持したころから、銃を手に出歩いたりしたため、近所の住民が「あんな人が銃を持っているのは怖い」と警察に相談することもあったという。犯行を未然に防止できなかったのか、警察は住民の訴えにどう対応したか明らかにしなければならないだろう。
警察庁によると、今年十一月までに起きた発砲事件は五十四件あり、猟銃使用は七件で、昨年同期の三件から増加している。違法な銃の取り締まりはもちろん、許可した銃の管理についてチェック態勢を強化する必要があろう。
(2007年12月16日掲載)