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攻撃を受けたチャドの村にたたずむ母親と乳飲み子(Photo by Uriel Sinai/Getty Images)

中国の綱渡り外交「ダルフール問題」

 【大紀元日本5月26日】長引く内乱で疲弊したダルフール地区の将来は、スーダンから数千キロメートル離れたところで決定される見通しだ。但し、それはニューヨークの国連本部ででもなければ、ワシントンででもない。

 欧米のメディアは、その鍵を握っているのは、ほかでもない中国とみている。中国は改革開放以来、経済成長によって地球規模の影響力を拡大しつつあり、スーダンとは政治面だけでなく、経済面、軍事面でも結束を強めてきた。

 北京の指導層は、伝統的に外圧によって外交方針を曲げることを嫌ってきたため、ダルフール地区に和平をもたらすような介入もしてこなかったが、国際的非難の大合唱から「綱渡り外交」を余儀なくされてきた感がある。

 国際的非難の渦

 中国とスーダンとは、ここ数十年に急速に接近、これは中国が経済力を持って台頭してきた証だ。北京は、スーダンにとって指折りの直接投資家であるだけでなく貿易のパートナーでもある。北京はこれまでに、スーダン国内のオイル・インフラに数百万ドル以上を投資したとみられ、ハルツーム当局はその見返りに一日50万バレルの石油を中国に輸出している。

 中国はまた、これまでの中期に渡りスーダンに武器を輸出してきた経緯があり、実際この今春には、ハルツームにより緊密な軍事協力を切り出した。こういった事情から、北京はダルフール地区の沈静化には消極的で、それはスーダンへの影響力が低下するとの観測からだ。北京はまた、かつて常任理事国としての特権を行使して、国連の安全保障理事会で、ハルツームへの制裁決議を拒否したことがある。

 しかしここ数ヶ月、国際社会が非難の渦を巻き起こしたことにより、北京当局も外交路線を修正し、綱渡りを始めた。

 米国の議員100人以上が、共同の連名による書簡を北京に出し、ダルフール地区を沈静化させるよう即時行動するよう求めたのに続き、ロンドンに本拠を置く国際人権団体「アムネスティー・インターナショナル」もまた、中国が国連決議に違反して武器をスーダンに輸出したという報告書をまとめた。

 米国のショー・ビジネス界では、映画監督のスチーブン・スピルバーグ氏とハリウッド女優のミア・ファローさんが、北京五輪を「虐殺五輪」として非難する声明を発した。そして、日米国内の北朝鮮系NGO組織もまた、脱北者の無慈悲な強制北送とスーダン問題を採り上げ、北京五輪をボイコットする動きをみせている。

 中国の本心とは

 こうした国際的な非難をもろに受けて、北京は徐々にハンドルを逆に切り始めた。北京は5月になって、はじめてアフリカ使節を指名、長らくジンバブエや南アフリカで外交手腕を振るった「アフリカ通」の劉貴今氏(元・駐南アフリカ大使)を立て、重い腰を挙げてダルフール問題に介入し始めた。

 中国はまた4月、ハルツーム当局に国連のPKO部隊をダルフール地区に受け入れるよう勧告、合わせて解放軍の工兵300人規模を派遣することも声明した。こうした一連の動きは、ケ小平以来の外交方針に徐々に修正が加えられつつあることを表している。

 では、中国の本心はいったいどこにあるのか。中国は、その台頭してきた経済力に見合う外交的な地位を得たく、また国際社会においてキープレイヤーになりたいようにもみえる。しかしながら、スーダン問題に国際的な非難が高まり、その野望が一時頓挫してしまった。

 またもうひとつの理由がある。中国は来るべき2008年北京五輪にどのような批判や影響も受けたくないのだ。北京五輪のボイコット運動は、北京指導層にとって頭の痛い出来事だ。しかし、同時に北京はスーダンとの蜜月を邪魔されたくないのも本心の事実だ。

 それゆえ北京は、危険な綱渡りを始めたようだ。一方では国際的な評価や評判を気にしながら、一方ではまたスーダンとの蜜月を維持する。これは一見すると非常に矛盾した難しいハンドル操作だ。北京の指導層は、政策面では伝統的に非常に保守的であるが、こういった一連の国際的非難を前にしてダルフール問題では譲歩せざるを得なくなったというのが本音だろう。

(07/05/26 10:09)



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