水着姿の子どもたちに散弾銃を乱射し、夜の街に消えた容疑者。つかめぬ足取りに、住民は眠れぬ一夜を過ごした。息を潜める早朝の街を、再び一発の銃声が切り裂く-。長崎県佐世保市のスポーツクラブ「ルネサンス佐世保」の発砲事件。犠牲になったのは、馬込政義容疑者(37)を「無二の親友」と口にしていた中学、高校時代の同級生男性と、容疑者も会員だったクラブのインストラクターの女性だった。「なぜこんなことが…」。事件は15日、容疑者の自殺という結末を迎えたが、謎はさらに深まった。

 長崎県佐世保市の散弾銃乱射事件で犠牲になった同市鹿子前町の漁業藤本勇司さん(36)は、3人の子どもがおり、仲の良い家族と近所で評判だった。「あの優しい人が、なぜ同級生に…」。住民らは一様に、言葉を失った。

 弟の重利さん(34)は馬込政義容疑者(37)について「兄とは無二の親友だった」と話し、「なぜ殺されたのか理由がよくわからない」と首をひねった。近くに住む無職陣山重美さん(68)も、「同級生に恨みをかうような人ではない」と語り、平和な一家の暮らしを壊した発砲事件への憤りで声を震わせた。

 住民によると、藤本さんは妻と幼稚園児の長女と長男、2歳ぐらいの二女の5人家族。藤本さんの自宅に隣接した両親の家には、網や浮きなど釣り具を作るための作業場があり、藤本さんは父親の仕事を継いで漁具などを製造販売していた。

 近所の田崎ユリコさん(60)によると、作業場では藤本さん夫婦と両親が4人で働き、子どもたちが頻繁に遊びに来て、笑い声が聞こえた。「思いやりのある一家で、犬をたくさん飼い、1匹が死ぬと家族みんなで泣いていた。勇司さんは、うちの庭の草刈りまでやってくれる優しい子でした」と唇をかんだ。

 また、近くの主婦平山洋子さん(60)は「長女が来年春に小学校に入学するのを楽しみにしていただろうに…。腹が立って仕方がない」と、目を真っ赤にした。

=2007/12/15付 西日本新聞夕刊=