インタビュー 大井夫人役 風吹ジュン 戦国時代といえども
子を守る母の姿は同じです

夫婦の不幸な関係が父と子の確執に

 大井夫人は自分の父親が戦って敗れた相手である信虎と、人質のような形で結婚させられてしまった女性です。だから信虎に対しては“夫でありながら敵でもある”という複雑な思いを抱いていたんですよね。
 夫に対して愛情がなかったわけではないけれど、素直に思いを表現することが出来なかった。悲しいことに、心と頭で考えていることがいつも裏腹で、態度もいつも裏腹になってしまう。信虎はそんな大井夫人に苛立ち、その反動で怒りの矛先を晴信に向けてしまったんです。  大井夫人が晴信に愛情を注ぐのは『いつか甲斐を奪い、父親の無念を晴らそうとするためだろう』という信虎のセリフに、とても納得するものがありました。そのことを肯定するわけではないけれど、大井夫人の中には常に晴信のDNAに対する葛藤があったんじゃないかしらって。晴信には父・信虎の血と敵対する大井夫人の家系の血が流れている。その矛盾や悩みを抱えて、晴信のことを心配していたんでしょうね。
 一方で女の性(さが)というか、夫への愛情も確実にあり、息子にも『父親とうまくやってほしい』という思いがあったはずです。だからこそ、『こうすればいいのよ』『こうしなさい』と晴信に言い続けてきたんです。
 でも、やっぱり親は子どもが一番かわいい。夫には申し訳ないけれど(笑)、母親は間違いなく子どもの幸せが一番。子がどう転んでも、どこへ行ってもいいんですよ、そこで幸せであれば。あとは、こういう時代ですから生きてさえいてくれればね。
 だから信虎を追放するという晴信の決断も、母の立場ではただ受け止めるしかない。そう仕向けたつもりはないけれど、当然起こるというか、いずれ起こるだろうと予測もしていたことでしょうから。

教育係としての自負を持ち続けて…

 信虎が追放され晴信の代になるといろいろなことが変わっていきますが、相変わらず大井夫人は母親として、また女性の立場から『それは間違いではないの』とか、『そこに心がないといけないんじゃないの』と息子を諭していきます。
 でも、勘助が軍師として武田家に入ってくるようになると、自分が読めない方向に息子が走っていくような気がして、母親としては心配なことが多くなるでしょうね。さらに先になると由布姫も甲斐にやってきます。その時、大井夫人は由布姫の心の安泰に気を配りながらも、晴信の正室である三条夫人の心の痛みにも気をもむことになりそうです。
 いずれにしても大事なことは教育係としての立場を貫いていくことですね。知性や考え方などは育ち方を見ればわかる。大井夫人には、成長した晴信の姿を誇りに思い、自分が与えた教育は間違っていなかったという自信もあるでしょう。そこで得たもの、培った母の力というものを、三条夫人、そして孫に伝えていきたいんです。そこは、ふつうのホームドラマに出てくるお母さんと、まったく変わりません。
 これまでの大井夫人は、『ちょっと重い』などと言われたりしましたが、やっぱり信虎がいる間はね(笑)。夫がいなくなったら、ちょっと軽くなれそうです。そして子どもを守る母、孫を守る祖母の顔でいたいと思っています。

 
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