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終わらない被害:ドメスティック・バイオレンス/1 古里や友人捨て /兵庫

 ◇離婚夫が長男殺害

 近畿のある街で暮らす川本弥生さん(45歳、仮名)と長女亜紀さん(17歳、同)には今年の正月、年賀状が1通も届かなかった。昨春、誰にも行き先を告げず、長年住み慣れた街を離れたからだ。この年末も年賀状を出す予定はない。「古里や友人をすべて捨てなければならなかった。私たちはこれからもきっと、逃げ続けなければならない」

 弥生さんは87年、勤務先で知り合った2歳年下の男と結婚した。2人の子どもを授かったが、男は97年ごろから、家族全員に激しい暴力を加えるようになった。01年、弥生さんは亜紀さんと家を出て、男と離婚した。

 長男諒君は男の元に残った。男に最も暴行を受けていたが、「パパを1人にするのはかわいそう」と話した。事件が起きたのは03年3月。男は15歳の諒君に「妹は『父には一生会いたくない』と言っている」などと言われて激高し、刺殺した。男は殺人罪で懲役12年が確定した。

 弥生さんは男と暮らしていた当時、DV(ドメスティック・バイオレンス=配偶者や恋人間の暴力)という言葉すら知らず、助けを求めることもできなかった。自分たちも被害者なのに「諒ちゃんは私たちの身代わりになった」と自責の念が消えない。「男が刑務所から出てきたら付きまとわれ、また恐怖を味わうことになるのではないか」。転居したいまも不安を抱え続けている。

   ×  × 

 「家庭内のもめごと」とみられ、実態を理解されにくいDV。被害者はPTSD(心的外傷後ストレス障害)や加害者の影におびえ続ける。母子家庭になる例も多く、生活の不安もぬぐえない。被害者はどんな日々を送り、どんな思いで暮らしているのか。川本さん母娘を通じ、実情を伝える。=つづく

〔神戸版〕

毎日新聞 2007年12月16日

 

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