2人の遺族に深い悲しみ 佐世保・乱射事件2007年12月16日01時41分 長崎県佐世保市のスポーツクラブで2人が死亡、6人が負傷した銃乱射事件は15日、8人を殺傷した疑いで行方を追われていた馬込政義容疑者(37)の自殺という急展開を迎えた。なぜ銃を乱射したのか――。大きな謎を残したままの結末に、犠牲になった2人の遺族や関係者らは深い深い悲しみと憤りに包まれた。 「(舞衣さんの)兄の結婚式で、花嫁が投げたブーケを舞衣が取った。でも、その花嫁姿を見ることはできませんでした」 15日夜、死亡した倉本舞衣さん(26)の通夜が佐世保市内の葬祭場で営まれた。倉本さんの父潤一さんが言葉を詰まらせながらあいさつすると、会場からすすり泣きの声が漏れた。 通夜には200人以上が参列。黒いドレス姿で満面の笑みを浮かべた倉本さんの遺影に涙した。倉本さんの中学時代の先輩の女性(27)は「まだ、いなくなった気がしない。舞衣ちゃんの笑顔に負けないように、私たちも笑顔でいなきゃいけない」と悲しみをこらえるように話した。 潤一さんと仕事上のつきあいがあるという佐世保市の税理士宮川茂則さん(58)は「銃は人の命を簡単に奪ってしまう。あってはならないことが起きた」と、うつむきながら小さな声で話した。 倉本さんの勤務先で、乱射事件の現場となったスポーツクラブ「ルネサンス佐世保」前に設けられた献花台。かつての教え子で市内の中学2年、佐生(さそう)悠香(はるか)さん(14)は花の山を前にしばらく泣き崩れ、「先生、天国に行っても笑顔で」と声を振り絞った。 両親の勧めで小学1年からルネサンスに通った。小学4年で「選手コース」を志願し、水泳コーチの倉本さんに教わった。タイムが伸び悩んだ時、「気持ちが弱くなったら次に進めないよ。一緒に頑張ろう」と励まされた。 小学6年で別のクラブに移った後も、大会で会う度に温かい声をかけられた。「先生のように人に元気を与える人になりたい」。倉本さんには打ち明けていなかったが、将来の夢は水泳の先生だ。 献花台には100人以上が訪れ、日が暮れても冥福を祈る姿が絶えなかった。 「こんな平和な街でなぜ銃を撃つのか。無差別に子どもも撃ったことも許せない」。花を手向けに来た市内の男性(37)は憤りを隠さなかった。 もう1人の犠牲者、藤本勇司さん(36)の同市鹿子前(かしまえ)町の自宅周辺には、多くの報道陣が集まった。弟の重利さん(34)は昼すぎに取材に応じ、「兄は馬込容疑者のことを『親友だ』と言っていた。なぜこんなことになったか分からない」などと言葉少なに話した。 藤本さんと取引のあった釣具店社長(59)は同日午前、藤本さんの父親から「心配をかけてすみません」と電話を受けたという。事件の原因についての心当たりを尋ねると、父親は「勇司は働いているが、馬込君は無職。馬込君は両親に『藤本君を見習ってやれ』などと言われていたような雰囲気があった。そんなことぐらいしか考えられない」と、少し興奮したような声で話していたという。 3人の子どもたちと遊ぶ姿がよく見かけられる、子煩悩な父親だったという藤本さん。社長は「藤本君はまじめで、恨みをかうような人じゃない。本当に残念だ」と語った。 PR情報社会
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