経済
スパコン効果どう生かす? 「世界最速」に熱い視線
スーパーコンピューターの建設予定地(写真中央から下の部分)=神戸・ポートアイランド2期 |
神戸市中央区のポートアイランド2期に整備される世界最速の次世代スーパーコンピューター(スパコン)。一大国家プロジェクトということもあり、今年三月の立地決定以来、周辺には大学や研究機関などの進出が相次ぐ。電力などのインフラ整備も進み、地域経済への波及効果が期待される。一方で、二〇一〇年度の運用開始までに、利用法や使いこなすための人材育成など課題も浮かんできた。(末永陽子)
神戸市は十月、ポーアイ2期の土地の割引率を最大五割から四割に引き下げた。市街地の地価上昇に合わせた形だが、担当者は「神戸空港の開港と医療産業都市構想に加え、“スパコン効果”もある」。
次世代スパコンは、総事業費千百億円を超える国家的プロジェクト。理化学研究所(東京)が事業を推進し、コンピューター本体は富士通とNEC、日立の三社が共同で開発する。本年度末に着工し、一〇年度中に一部稼働する予定。
計算能力は一秒当たり一京(千兆の十倍)回。〇二-〇四年に世界最速を誇った海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」(横浜市)の二百五十倍、現在トップの米国製の三十倍の速さで、世界首位への返り咲きを狙う。
研究施設内には数百台のコンピューターが並び、各大学や民間にも開放される。コンピューター上で人体を再現し、新しい薬や治療法、手術法を検討▽災害の予測▽ロケットエンジンの設計や開発-など幅広い分野に利用できる。
理研によると、雇用は専門分野の研究者二百-三百人。当初、直接経済効果を疑問視する声もあったが、市の担当者は「本年度末に着工すれば企業や大学の視察も増え、企業誘致に弾みがつく」と期待する。
実際、甲南大学フロンティア・サイエンス学部(仮称)や神戸大学が相次いで進出を決めた。また、企業誘致を見込んだ電力や水などインフラ整備も進む。
◇
しかし、スパコンは国際的な開発競争が激しい。「地球シミュレータ」も〇七年には世界三十位に転落し、国内でも東京工業大に抜かれた。専門家からは「競争の厳しい世界だけに、本格稼働から五年以内に一定の成果が求められる」との指摘もある。
地元企業への波及効果もまだ未知数だ。神戸市内の中小業者は「『スパコンって何だ』というのが正直な意見。中小企業にまでメリットがあるのか分からない」と打ち明ける。
〇五年に全国百六十社でつくった「スパコン応用協議会」は、鉄鋼メーカーや鉄道会社など大手が目立ち、関西の企業は一割にも満たない。理研も「地元経済界への普及と、システムを使いこなすための人材育成が課題」という。
このため、市や兵庫県、神戸商工会議所は共同で、産業界の利用を促すための財団を来年一月に設立。初歩的な問い合わせから利用方法の相談まで応じる窓口を設ける。
理研は「性能以上にスパコンをどう使うかというソフト面が大切。十年、二十年と進歩を続けるには、官民一体となった長期的な視野での開発計画が求められる」と話している。
(12/16 10:06)
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