キュートなバーチャルアイドルの歌声を自由に編集し、好きな歌を歌わせることができる音楽ソフト「初音ミク」。8月の発売以来、動画投稿サイトにソフトを利用した作品が続々投稿され、注目を集めた。さまざまなメディアにも紹介され、もはや音楽ソフトの枠を超えた“アイドル誕生”の裏側を追った。【立山夏行】
「初音ミク」は、ヤマハが開発した音声合成エンジン「ボーカロイド」を使い、音声データをサンプリングした音源ソフトだ。身長158センチ、体重42キロ、肩に「01」の文字が入り、青緑のロングヘアーをした16歳の可愛いバーチャルアイドル歌手という設定で、若手声優の藤田咲さんが声を担当している。簡単な操作でメロディーと歌詞を入力するだけで“歌って”くれ、音符をダブルクリックするだけで発音の強弱やビブラートを付けるといった編集が可能だ。
開発元のクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市中央区)は、04年からボーカロイドを使った音源ソフト「MEIKO」を発売したが、音楽関係者以外には広まらなかった。
ところが、一部のユーザーが動画投稿サイトなどでソフトを使った楽曲などを発表したところから、「キャラクターを設定すればもっと親近感を持ってくれるのでは」と、アニメ好きの開発者から「美少女バーチャルアイドル」というアイデアが出された。「初音ミク」のネーミングは、バーチャルアイドルとして「初」めての「音」で、「未来からやってきて、未来を作り上げていく」ということで「未来」(ミク)」に決まった。
だが、コンセプトに合った声優探しには苦労した。ルートもなかったため、半ば飛び込みで大手声優事務所に声をかけ、約500人の声のサンプルを取り、何度も聞いて候補を絞り込んでいった。明りょうな滑舌、可愛く透明感がある声質のうえ、女性的で凛としたインパクトのある高音域が、ボーカロイドと好相性ということで藤田さんの起用を決めた。
収録が始まっても、通常のアニメと違い、最低限のプロフィルを設定しただけなので、藤田さんがキャラのイメージをつかむのが大変だったという。いくつかのパターンを収録しながら、「もう少し可愛く」などと細かく修正してキャラを作っていった。
パッケージイラストは、同社の携帯サイトのイラストを担当していたKEIさんに依頼。ヤマハの初代シンセサイザーで、それまでの音楽にない音を生み出した名器「DX7」のカラーをイメージした衣装というこだわりぶりだ。
こうして誕生した「初音ミク」は、発売直後から、「ニコニコ動画」などの動画投稿サイトで大反響を呼び、その作品を見て、「初音ミク」を購入した人たちが投稿する“連鎖反応”が発生。2カ月で1万5000本以上を売り上げた。
このヒットを受け、KEIさんが「コミックラッシュ」で「初音ミク」をマンガ化、08年2月発売予定のゲーム「トリノホシ」では、初音ミクがイメージ曲を担当することになった。
12月27日には、ゲーム「アイドルマスター」で舌足らずな歌声を披露し、ネットで大人気となった声優の下田麻美さんを起用した第2弾「鏡音リン・レン」が発売され、新たな“名曲”が、ネットをにぎわせそうだ。
2007年12月16日
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