9日午前10時53分ごろ、静岡市葵区流通センターの西約110メートルの遊水池に、オールニッポンヘリコプター(東京都江東区)所属のNHK取材用ヘリが墜落した。乗員2人のうち、機長の神奈川県相模原市東淵野辺4、小宮義明さん(57)が全身を強く打つなどして死亡し、整備士の同県茅ケ崎市南湖3、亀山幸代さん(33)は重傷を負った。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は調査官3人を現地に派遣し、静岡県警静岡中央署と事故原因などを調べている。
同署などによると、ヘリはドイツ・ユーロコプター社製のEC135T2型で、NHK新潟放送局の取材用に使われていた。9日午前10時ごろ、大阪・伊丹空港に向けて東京ヘリポート(東京都江東区)を離陸し、給油のため、静岡ヘリポートに午前10時45分に着陸する予定だった。事故の約10分前に、亀山整備士から会社に「(機体の方向を制御するラダーの)ペダルの調子が悪く、着陸が乱れるかもしれない」と携帯電話で連絡があったという。その後、同ヘリポートの南西約540メートルの地点で墜落した。
目撃者の話などによると、ヘリは墜落の際。上空50メートルくらいから機体を数回転させ、キーンという異音を発していたという。静岡ヘリポート管理事務所の井鍋進所長は「上空でホバリングをしているのが見えたので着陸に向けて調整しているのかと思ったら回転して落ちた」と話した。
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ヘリは後部のテールローターの傾きをラダーペダルで操作して姿勢を制御するが、整備士はペダルの不具合を連絡してきた。ヘリは構造上、テールローターの回転が止まると、メーンローター(回転翼)の回転で機体が振り回されてしまう。機体は回転しながら墜落しており、加藤寛一郎・東大名誉教授(飛行力学)は「テールローターに何らかの不具合があった可能性が高い」と指摘している。【浜中慎哉、望月和美、田口雅士】
◇「機長はベテラン、離陸前点検では異常なし」社長会見
9日夕、東京都江東区のオールニッポンヘリコプター本社で記者会見した日高誠一郎社長らよると、同社はNHKの取材ヘリ13機を所有している。小宮機長は取材ヘリのパイロットを21年間務めるベテランで、飛行時間も5737時間(11月1日現在)と長く、過去にトラブルはなかったという。同社は「原因は不明」としたうえで「ラダーの故障で、『旋回きりもみ状態』になったとは考えにくい」と説明した。離陸前点検ではヘリに異常はなかったという。【杉本修作】