夫の家庭内暴力が原因で別居した韓国籍の女性(67)=岡山市=が、外国人登録に別居後の居住地を登録したため、夫の死後、遺族年金が支給されないのは不当な差別にあたるとして国を相手取り、不支給処分の取り消しを求める訴訟を近く岡山地裁に起こす。【石戸諭】
訴状などによると、女性は89年に結婚後、夫から繰り返し暴力を振るわれ、98年に別居。夫は離婚訴訟を起こしたが、有責配偶者からの請求にあたるとして認められなかった。
04年9月に夫が死亡した後、06年10月に遺族厚生年金の受給資格を得たが、翌07年2月、岡山西社会保険事務所は「夫によって生計を維持していたとは認められない」として支給を取り消す処分を決定した。女性は2度、処分取り消しを求めて審査を請求したが、いずれも棄却された。
厚生年金保険法は給付要件を「被保険者の死亡当時に、その者によって生計を維持したもの」と定めているが、原告側は「社保庁の通知では別居状態であっても住所が住民票上、同一であれば認められる。原告は離婚していないため、日本国籍で住民票が夫と一緒であれば支給されるケースだ」と主張。「外国籍のため住民票登録ができず、別居後の住所を外国人登録していた。不支給は法の下の平等を定めた憲法に違反する。外国人に対する不当な差別だ」としている。
毎日新聞 2007年12月15日