◎北陸短観 見えてきた景気悪化の兆し
まだ悲観するほどではないにせよ、先行きが大いに懸念される数値である。日銀金沢支
店が発表した十二月の「北陸短観」で、業況が「良い」と答えた企業から「悪い」とした企業の割合を引いた業況判断指数(DI)は、マイナス七と前回九月調査と同じだった。今年三月から三期連続で悪化した後の「横ばい」であり、最近の下落傾向に歯止めが掛かったと思うのは早計だろう。むしろ、先行きの予測がマイナス一二とさらに落ち込む点を考慮すると、景気悪化の兆しが見えてきた印象がぬぐえない。
サブプライム問題に端を発した世界規模での信用収縮に加えて、原油高や円高が北陸の
経済にも大きな影響を及ぼしている。北陸短観と同じ日に発表された日銀短観では、大企業製造業のDIが三期ぶりに悪化した。これと歩調を合わせるように、北陸三県でも景気回復のけん引役だった製造業の悪化が目に付く。
たとえば、景気を「良い」とした製造業の数は五期連続で数を減らし、昨年十二月にプ
ラス一七だったDIは、今月、プラス五にまで落ちた。「悪い」と答えた企業がそれほど増えたわけではなく、業績好調な企業が、じわじわと数を減らしている。先行きの予測がマイナス四と極めて厳しいのは、原油高をはじめとした原材料費の高騰や円高などにより、経営環境が急速に不透明感を増している証拠だろう。活発に設備投資を行い、新規採用を増やしている製造業の「変調」は何とも気掛かりだ。
一方、非製造業の企業心理も悪化している。好調を維持してきた製造業とは対照的に、
DIのマイナスが続いてきたが、業況が上向く兆しは見えず、不動産とリースを除くほとんどの業種で低空飛行が続いている。
建築基準法の改正により、石川、富山両県の住宅着工数が前年比三割減った影響で、建
設は九月がマイナス三三、今月が同二四と大きく落ち込み、先行き予測もマイナス三四と、依然厳しい。原油高の影響で運輸も九月のゼロからマイナス二二と大幅に悪化した。
日銀は十九、二十日に開く金融政策決定会合で、追加利上げを見送らざるを得ないだろ
う。来年三月に任期を終える福井俊彦総裁は、在任中の利上げにこだわるべきではない。
◎国会再延長 予算が大事の認識ほしい
今国会の会期が来年一月十五日まで再延長されたことは、新テロ対策特別措置法案の成
立に不退転の決意で臨むという福田康夫首相の強い姿勢を示すものである。対テロ新法案の処理をめぐる与野党の対立がエスカレートして衆院解散・総選挙という事態に至ることも想定されるため、浮き足立った議員も少なくないようだが、今国会に引き続いて通常国会を召集し、新年度予算案の審議に入らなければならない。国の予算の成立、執行が遅れると地方自治体の予算執行も遅れ、国民生活に与える影響はたいへん大きいことを国会は再認識する必要があるし、とりわけ福田首相には「選挙よりも予算が先」と心得てもらいたいと思う。
国会会期をさらに三十一日間延長することで、野党が対テロ新法案の参院採決を引き延
ばしたとしても、憲法の六十日ルールで否決とみなされ、衆院での再議決が可能になる。政府、与党として再議決による法案成立をためらう必要はないと考える。野党がもし参院での採決に応じないとなれば、参院の存在、役割そのものが厳しく問われることになろう。いわゆる参院無用論をみずから招くことになりかねない。
野党は年金記録不備問題や防衛省の調達疑惑追及を優先し、福田内閣を追い込む構えを
みせている。この二つはむろん看過できない問題である。しかし、重要法案の審議先延ばしに利用する党利党略的な意図があれば、かえって国民の支持を得られないのではないか。国際平和貢献活動の在り方という本質的な問題を含めて対テロ新法案の審議を尽くし、採決するのが筋である。福田首相は仮に問責決議案が参院で可決されたとしても、決議に法的拘束力はないのであり、動じる必要はない。
年明けの通常国会は予算案とその執行に必要な関連法案などを審議する最も大切な国会
である。衆参ねじれ状態で、重要法案が通らない状況がいつまでも続けば、国家、国民の利益は大きく損なわれる。日本の国会は官僚が作った法案の単なる処理機関と化し、政策形成機能を発揮できずにいるとかねて批判されてきた。この批判に今こそ真摯に耳を傾け、与野党協議で政策を作る作業の必要性を認識してほしい。