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2007年12月15日

 大物選手の名が続々と出て来たプロ野球大リーグの薬物使用報告書である。来日し、優勝に貢献した「助っ人」選手の名もある

こうまで汚染が進んでいるのを知らされると、果たして薬物使用は悪なのか、という妄想を抱いてしまうが、悪いに決まっている。厳しい鍛錬に耐える多くの選手の努力をあざ笑う行為であり、ファンの怒りも当然である

が、たとえば五輪である。これまで、薬物まみれの金メダルや世界記録という快挙がどれだけ出現し、はく奪されたことか。「火事場のばか力」という尋常でない能力が絶えず求められるのが大選手であり、見るものを興奮させる。とはいえ、火事がしょっちゅう起きるわけではなく、そこに薬物の誘惑が忍び込む

私たちが薬物選手の多くを知ったのは、テレビ中継を通してである。テレビはスポーツの楽しさを存分に提供してくれているが、「英雄」をつくり出し、視聴者の心をとらえる仕掛けもある

薬物使用の落ちた英雄など見たくもないが、それを出し続けるのも人気スポーツである。見る者にはやしたてられて、「火事場の力」を演じ続ける選手たちが哀れにも思えてくる。


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