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ロシア後継指名 強権心配なプーチン院政

 ロシアのプーチン大統領が来年三月に行われる大統領選の後継候補としてメドベージェフ第一副首相を指名した。メドベージェフ氏は、プーチン路線継承を公約に立候補の意向を表明し、新大統領に選ばれた場合はプーチン氏に首相就任を要請する考えを示した。

 今月初めに行われた下院選では、プーチン氏を名簿筆頭に載せた与党「統一ロシア」が、全議席の三分の二以上を獲得し圧勝した。大統領辞任後もプーチン氏が首相として権力を握る「院政」のシナリオが明らかとなってきた。

 メドベージェフ氏は、プーチン氏と同じサンクトペテルブルク出身で、二〇〇〇年の大統領選では選挙対策本部長だった。政府系の天然ガス独占企業「ガスプロム」会長を務め、政権内ではリベラル派と目されている。四十二歳と若い後継者だ。

 プーチン政権は、シロビキと呼ばれる軍や治安機関出身の強硬派のほかリベラル派、大統領と同郷のサンクトペテルブルク出身者ら複数の派閥で構成されているとされる。

 大統領後継をめぐっては、メドベージェフ氏と旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のイワノフ第一副首相の二人が有力とみられてきた。ところが九月に政治家として無名に近かったズプコフ氏が首相に抜てきされてから、ともにシロビキを基盤とするイワノフ氏とズプコフ氏の間で激しい権力抗争が起きている。

 両氏いずれが権力の座についても、安全保障政策や民主主義の進め方で西側との対決姿勢は強まろう。プーチン大統領としては、シロビキと距離を置いたリベラル派のメドベージェフ氏を起用することで、決定的な対立を避ける意図もあったとみられる。

 メドベージェフ氏は、ウクライナや欧州の天然ガス供給問題などでは国益追求の政策を強引に進めてきた。大統領となっても、「強いロシア」を目指すプーチン路線が急に変わることはなかろう。

 それにしても大統領を辞めて格下の首相に就任して政権を実質的に支配しようとするのは前代未聞の政治手法である。ロシアで院政を行って権力を保持できた例はなく、二重権力に陥る危険は高い。

 プーチン大統領が就任して以来、原油や天然ガスの輸出による貿易黒字が経済成長を支え、大統領に国民の信任が集まったのは事実だ。

 しかし一方では民主主義的手続きが後退し、汚職や官僚主義の弊害は高まっている。このままでは旧ソ連のような強権的国家になる恐れもある。民主主義を置き去りにした院政でロシアの繁栄をもたらすのは難しい。


薬害肝炎和解案 合意へ練り直しが必要だ

 薬害C型肝炎大阪訴訟の控訴審で、大阪高裁は原告の患者と被告である国、製薬会社に和解骨子案を提示した。しかし、投与時期などで補償対象が限定される内容のため、未提訴者を含む全員救済を目指す原告・弁護団は受け入れを即刻拒否した。

 薬害肝炎訴訟では東京、大阪など五地裁で判決が出されている。企業の賠償責任は五地裁、国については四地裁が認めたが、救済範囲はまちまちだ。和解骨子案の示す補償対象が大きな焦点だった。

 骨子案は公表されなかったが、原告側によると国などの責任範囲を最も絞り込んだ今年三月の東京地裁判決に基づいた内容という。「国と製薬会社に解決責任がある」としたうえで、補償の対象となる投与時期をフィブリノゲンで一九八五年八月―八八年六月、第九因子製剤は八四年一月以降とした。すでに提訴している範囲外の患者には原告・弁護団に訴訟遂行費などとして八億円を支払うとする。

 患者側は、全面解決には未提訴者も含め被害者全員の一律救済を求めている。国側の主張を取り入れ補償範囲を限定した和解骨子案では、救済の手が差し伸べられるのは限られる。同じ薬害に苦しむ患者の線引きは認めないという原告の憤りはもっともだ。

 薬害肝炎は製薬会社とともに、ずさんな対応で感染を拡大した薬事行政の責任である。何も知らないまま人生を暗転させられた被害者の心情は察して余りある。いまだに投与されたことを知らないとか、カルテが廃棄されて投与を証明できない人々も多かろう。今後に重い課題を抱える。

 政府や製薬会社は未提訴者への対応を含め骨子案を練り直し、和解に向けて原告と協議していく必要があろう。

(2007年12月15日掲載)
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