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心臓病治療に太もも筋肉利用、回復し退院へ 大阪大病院

2007年12月14日

 重い心臓病患者の筋肉細胞からつくった「心筋シート」を心臓に張って治療する手術で大阪府の男性(56)が、補助人工心臓を外すまでに機能回復し、月末にも大阪大病院を退院することになった。世界でも例のない臨床研究で、心臓移植を待つしかなかった患者に再生医療という選択肢を与える可能性が出てきた。澤芳樹大阪大教授(心臓血管外科)は「まだ1例で判断は難しいが、症例を積み重ねて普及をめざしたい」と話している。

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 患者は昨年2月、意識のない状態で搬送された。補助人工心臓をつけて心臓移植を待っていたが、心筋シートを張る手術を今年5月に受けた。

 心筋シートは、患者の太ももの筋肉(約10グラム)からつくる。傷つくと分裂や分化して損傷を補う筋芽細胞などを取り出し、特殊な培養液中で直径約5センチ、厚さ約50マイクロメートルのシートにする。3、4枚重ねて弱った心臓の表面に張る。

 患者は9月に補助人工心臓を外した。現在、心臓から送り出される血流が改善、心不全の重症度をはかる指数も正常値に戻ったという。

 澤教授によると、心筋の再生は移植した筋芽細胞が直接増えたのではなく、血管の増殖因子などの増加による影響だと考えられるという。

 筋芽細胞を培養して直接注入する臨床研究は欧米などにもあるが、注入した細胞の一部しか機能しない問題や副作用の指摘もあった。こうした問題をシート方式で避けられる見込みが出てきた。

 臨床研究は東京女子医大と共同で実施。補助人工心臓を着けて心臓移植を待っている70歳未満の拡張型心筋症患者が対象で2年間に6人を予定する。同症は心筋が弱って薄く伸び、血液をうまく送り出せなくなる。重症になると心臓移植しか治療法がなくなる。

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