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自転車事故が増加 運転ルールの普及課題 /京都

 ◇歩行者の死亡事故2件発生 府や府警、防止対策に奔走

 歩道を走る自転車が歩行者にけがをさせる事故が増加している。健康志向から自転車利用者が増加したことやマナーの悪さが背景として指摘され、歩行者が死亡する事故も起きている。府は販売店に対し、購入者に安全な運転方法を説明するよう義務づける「自転車安全利用条例」を制定。府警も飲酒運転には交通違反の切符を切って罰金を科すなど、事故防止対策に乗り出している。【熊谷豪】

 ■ルール違反

 買い物客でにぎわう河原町商店街。人波をかいくぐるようにして、自転車がすり抜けていく。「自転車乗らんと押してね」。商店街などが作った張り紙などお構いなしだ。2人乗りのカップルや、ベビーカーの隣を平気で走る自転車も。私も歩道を歩いていると、後ろから音もなく近づいてきた自転車がスッと腕をかすめていった。

 道路交通法上、自転車は「軽車両」。原則車道を通行しなければならず、歩道は「通行可」の標識のある比較的広い場所しか走れない。五条署は、自転車は押して歩くよう呼び掛けるチラシを作製・配布しているが、ルールはなかなか守られない。

 ■死亡ひき逃げ

 府警の調べでは、今年1~9月、自転車がからむ事故は2614件発生。交通事故全体(1万2526件)の5分に1を占めた。この数字の大半は自転車が被害者だが、歩行者らを負傷させる事故は96年(14件)から06年(56件)の10年間で4倍に急増した。

 歩行者の死亡事故も記録のある01年以降で2件発生した。今年10月24日未明、伏見区の歩道で女性(77)が無灯火の自転車にひかれ、頭を打って約2週間後に死亡。自転車は逃走し、伏見署はひき逃げ容疑で捜査している。06年1月にも、長岡京市の車道で、男子中学生(当時15歳)運転の自転車が、自営業の男性(72)をはね、男性は頭を強く打って死亡した。午後6時で暗い上、少年はよそ見をしていたという。

 ひとたび事故を起こすと、自転車は乗用車のように損害保険に入っている人が少ないため、多額の賠償金に苦しむことになりかねない。自転車が電柱を避けて車道に飛び出し、バイクの運転者が片目を失明した事故で、京都地裁は00年9月、自転車運転者に3300万円の損害賠償を命じた。自転車の交通事故に詳しい高畠希之・弁護士(東京弁護士会)は、「加害者には重い負担がのしかかり、被害者も賠償金を受け取れずに泣く恐れもある」と指摘する。

 ■健康志向

 京都は学生の街。市街地も平たんで、もともと自転車利用者が多いと言われてきた。府内の自転車台数は年々増え続け、00年の135万台が05年には156万台(自転車産業振興協会まとめ)。府民の1・6人に1人が自転車を持つ計算だ。

 背景について、自転車を使った観光ツアーを企画する「京都サイクリングツアープロジェクト」(KCTP)の多賀一雄代表(40)は「健康志向から、通勤に自転車を使う人が増えているのが最大の理由」と分析する。

 一方で、台数は増えているのに、運転マナーは向上していない。府警が昨年5月に歩行者や自転車利用者を対象に実施したアンケートでは、「自転車が怖い」と感じたことのある歩行者は79・3%。理由の上位を「スピードの出しすぎ」「歩道通行」「携帯電話利用運転」などが占めた。

 ■飲酒運転ダメ

 自転車の乱暴な運転を取り締まろうと、警察庁は04年、交通切符を積極的に適用するよう全国の警察に通知した。警察官の注意を無視して歩道を通行▽酒酔い運転▽2人乗り--などの運転者が対象で、府警は06年に33件、今年は10月末までに23件を検挙した。

 逮捕者も出た。東山署は先月18日、東山区の路上を酔っぱらって運転し、小学生2人に衝突してけがをさせた男(35)を重過失傷害と道路交通法違反(飲酒運転)容疑で現行犯逮捕した。

 府は10月、都道府県単位では初の「自転車の安全な利用の促進に関する条例」を制定。6歳未満の幼児を自転車に乗せる際のヘルメット着用のほか、自転車販売店に点検整備の必要性を利用者に説明することを義務づけた。

 KCTPの多賀さんは「自転車の台数に比例して事故も増えてきた。運転ルールの普及が今後の課題だ」と話す。

毎日新聞 2007年11月25日

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