日経ビジネスの5月21日号にBMWの新工場建設の件が載っていました。。
台数ベースでは、すでにメルセデスを抜いたものの、トヨタからの追い上げを
受けて、新工場を10数年ぶりに建設した、という記事でした。。
新工場の特徴は、徹底的に従業員の生産性に配慮し、間接部門も工場の近くに配置し、顧客からの注文に迅速に答えることができるように考えられた新工場との事でした。ドイツ国内であれば10日前後で納品が可能で、そのカスタマイズ性によって、差別化をはかり、付加価値を挙げていくことで、高級化路線の全社戦略と整合性がとられるようです。
普通に読んでいれば、ああそうか、となりそうなところですが、同じような思想でTOCからスループットを挙げていくのは、トヨタ的なリーンプロダクションでもしているはずです。。その目的というか言い方が、一方はリーンプロダクションとするか、顧客の注文にすばやく答える高級化のための差別化か、という言い方の違いだけで、やっている行為自体は同じであり、結局、全社戦略とどのように整合性を取ったように、マーケティング的にメッセージを発していくか、ということが重要なのだと感じました。
このあたりの生産戦略とマーケティング戦略の融合、そのための経営戦略の明確化はさすが、欧州一の自動車企業BMWだな、と感心した次第です。
2007年5月30日
言い方しだい。。BMWの新工場建設に思う。
2007年5月28日
おごれるものも久しからず。MicrosoftとYahooの提携話に思う
自分の研究分野は、提携戦略なのですが、最近の大きなトピックとしては、YahooとMicrosoft
二社の提携話です。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0705/05/news003.html
どちらも90年代後半のInternet興隆期には絶大な力をもち、自分の資源は
すべて内部化し、他の巨大企業との提携などあまり関心がなかった企業です。
今回の提携の背景にはもちろんGoogleの興隆があり、そのために仕方なく提携をすすめているというのが現状のようです。
一般に提携によって可能な価値創造は、3種類あり、
- 提携によって絶対多数をとってしまい、その輪の参加者だけで規格などの決定権を握ってしまう
- 自分にない資源を持つ相手と提携し、あたらしいイノベーションを起こす
- 自分にない技術を学習する。
今までのMicrosoftはWintel連合を作り、1の提携メインだったものが、仕方なく2の提携に踏み切ったというところが現実と考えます。。
ただ、この提携に対する態度にも2つあり、資源の内部化ができなかったための「仕方なし」の後ろ向きの提携か、積極的に他社の資源を利用しに行く提携とはその後の実りも大きく違うというところが難しいところです。
多くの企業は力のあるときは、半ば強引に内部化を進めますが、ちからが衰えてくると、仕方なしに弱者連合としての提携に踏み切り、えてしてそのような提携の成果は芳しくありません。
今回の提携では、MicrosoftがYahooをM&Aで強引に内部化しようとしたところ、Yahooから拒否をされたとの事ですが、そのこと自体がMicrosoft時代の終わりを予感させるものであり、Googleの興隆によって仕方なく企画された提携である限り、どのみちその成功確立は低いといわざるを得ないと考えます。
2007年5月25日
イノベーションへの解:ジレンマを超えて
クリステンセンの大ベストセラーのイノベーションのジレンマには、続編がいくつか存在します。イノベーションへの解は、そのなかでも前作のジレンマで示した、破壊的技術の理論を用いて、以下にコモディティ化を回避するか、戦略に落とし込むかを示した本になります。
持続的技術とは、現在の技術の延長線上にある技術であり、個別例としては、Playstation2に対するPlaystation3などがあります。Playstation3は基本的な技術思想は、Playstation2と変更がなく、それぞれの要素のスペックを向上させたものになります。
それに対して、破壊的技術とは、現在の技術ベクトルの延長線状にはなく、まったくあたらしい価値を顧客にもたらすもので、従来の技術はほしかったけれども、料金が高くて手が出なかった顧客や、従来の技術の機能には十分すぎるほど満足しているにも係らず、料金が高いことを気にしていた顧客にとって受け入れられ、持続的技術の市場を破壊します。
具体例としては、任天堂のwiiがよく挙げられ、スペック的には決してPlaystation3にかなわなくても、今までPlaystation2に手が届かなかった人たちに圧倒的な支持を受け、トップをひた走っています。
イノベーションの解のメインテーマである、ではどうすれば経営管理にこの理論を埋め込めるか、ということに対しても記述があり、ミンツバーグの創発戦略理論とのからみで論じられています。つまり、持続型の技術開発戦略を戦略に取り込む時は、従来の戦略論の意図的戦略として、年次の経営計画書で計画し、逆にどのような技術が主流になるかわかりづらい破壊的技術を戦略に取り込むのは、創発戦略として、その都度戦略に取り込むことがのぞましいのです。最初から100%完全に未来を予想した戦略は立てようがなく、技術革新の不確実性が高い領域では、むしろボトムアップにも目を配り、ステージゲートセオリーなどの技術戦略マネジメントで、有望なものを統合化・全社戦略に取り込んでいくべきと考えます。
その他、製品アーキテクチャ(モジュラー型/インテグラル型)との関係性において、破壊的技術、持続的技術が論じられてもおり、前作に引き続き、非常に興味深い書籍です。
2007年5月22日
なぜ日本型組織では戦略が不全になるのか? 三品先生の戦略不全の論理考察
日本企業では、現場のモチベーションは高いけれども、企業全体として、活動の統合がなされず、すなわち企業としての戦略がないとされています。
戦略不全の論理では、なぜそのような事になるかを論じています。本当に戦略がないのか、という命題については、データを用いて検証しており、1960年代から、一貫して日本企業の売上高利益率は低下し続け、逆にアメリカ企業は上昇を続けているグラフが提示されています。日本企業は高度成長期に飛躍的に発展したとされていますが、実は累積生産量の増加とともにコスト削減が図られる一方で、慢性的な低収益にあえいでいたというのが、現実です。1990年代は失われた10年といわれていますが、それは必ずしも正しくなく、90年代はバブル崩壊の後遺症でしかなく、慢性的な低収益体質は、高度成長期を含む40年間一貫して続いていたものでした。
実際のケースとしては、コマツとキャタピラーに焦点を当てて考察がされており、キャタピラーのCEOがその在位17年一貫して、ひとつの戦略「行き詰まりを見せている米国市場ではなく、70%以上の道路がある、途上国を含む世界戦略で、収益性を確保する」を追求しているのに対し、コマツは17年間で4人の社長が交代し、それぞれが会社に対する思いはあるものの、全体を統合し、数十年かけて高収益を上げるような戦略ではなく、それらの思いを代弁するためのペットプロジェクトを抱えていたことがあります。
なぜ、このようなことが日本型企業では起こりえるのか??
一言でいえばそれは戦略が難しいからであり、ボトムアップでは戦略志向にはなじまず、部課レベルでは全社を統合する戦略にはならず、戦略は駅伝ではなくマラソン型であり、トップ交代が頻繁ではその継続性が保たれないことなどが挙げられます。
そもそも戦略不全には2種類あり、ひとつは慢性的戦略不全であり、これは日本企業に特徴的なもので、もうひとつは急性戦略不全とも言うべき、アメリカ型の戦略不全で、これはトップが現場の作業に理解がないために、頓珍漢な戦略を立てるために、逆に戦略が実行されない事があります。アドバルーンのような戦略を立てた例として80年代の日産などの例が挙げられています。
そもそも、日本企業がボトムアップ型の意思決定を行い、経営者も長い年月をかけて選別させらられるのはひとえにモチベーションを維持するためであり、ゆえに日本企業は戦略性を犠牲にしてきたと考えられます。逆にアメリカ型のファストトラックでは、経営者はMBAをとりその道だけをすすみますが、ビジネスの現場を経験しないので、頓珍漢な戦略と現場への敬意を欠いた経営者だけが拡大再生産されるという現実があります。
どちらが良いかは一概にはいえませんが、企業は横並びではなく、自社の置かれた環境にかんがみて、戦略性をどの程度とりいれて行くかを考えなければいけません。
2007年5月20日
コア・コンピタンス経営再考
自分の研究領域は、シリコンバレー型企業のアライアンス戦略、戦略的アライアンスですが、その分析のフレームワークではG.ハメルのフレームを使用して進めています。そもそも、戦略的アライアンスが昨今、このように興隆してきたのは、企業が自社のコア・コンピタンスへ資源の投入を加速してきたからであり、アライアンスの増加、アウトソーシングの増加はすべて、コア・コンピタンス経営の浸透が原因ともいえます。
原書のコア・コンピタンス経営を読んでみると、むしろコア・コンピタンスというキーワードはあまり前面に出ておらず、むしろ未来へ向けた戦略と言うことが強く書かれています。
未来へ向けた戦略とは、
- 未来をイメージする能力
- 構想を展開する能力
- シェア争いをする能力
を順番に展開するものをさし、これを戦略計画に落としこむことが重要となっています。その際の指針は、自社の経営資源に整合性を取るだけでなく、ストレッチした目標を定めるストレッチ戦略、ストレッチ戦略を実現するために、既存の資源を有効活用するリバレッジ戦略です。
未来をイメージするためには、子供の目をもって謙虚に、既存の商品の枠組みを超えて、発想して産業の未来をイメージすることが重要と書かれています。多くの日本企業では、このような能力はあまり高くなく、具体的な能力のイメージがわきづらいと思います。しかし、私の研究対象のシリコンバレー型IT企業では、むしろこの能力があるからこそ、ある程度の規模まで成長できることが多いと思います。
つぎに構想を展開する能力の段階で、コア・コンピタンスへの資源の集中と、一社で製品・サービスの価値連鎖を完成させることは不可能であるので、企業提携を行う必要があるとしています。能力構築戦略と、それ以外の要素の企業連携で手に入れる方法、シリコンバレー型企業の中でも得意とするところと、そうでないところが分かれる部分になります。
自分の研究対象の企業は、未来を描く能力はすばらしく、かつすばらしいコア・コンピタンスがありながら、それをうまく価値連鎖に結びつけるための企業連携の能力が衰え、伸び悩んでいるのが現状です。
ビジョンがすばらしく、かつ企業連携を効果的に行った例として、最近のよい例ではiPodの成功があります。Appleは価値連鎖のなかで自社が行う要素を最小にしながら、未来をみとおす能力と、企業連携を促す能力で、iPodを世に送り出しました。
未来へ向けた戦略の最終段階で、シェアをめぐる競争が登場します。G.ハメルによれば、従来の戦略論では、このシェアをめぐる競争に過度に注目し、その前段階の考察が抜け落ちていると指摘しています。シェア争いにいたるまでには、いくつかの段階を経ているはずで、その部分をきちんと構築する能力がなければ、シェア争いに突入したときに敗退するとしていますが、理解ができる論調です。
2007年5月17日
OpenSource DWH/CRM Expoに参加して
東京ビッグサイトで開かれているDWH/CRM Expoに参加してきました。5月16日から18日まで
開催されていて、国内外の情報系システムの企業の製品が出展されています。インフラ系、業務系のアプリはあまり展示されておらず、来月のInteropでそちらは情報を集めようと思いました。。
CRM/DWHということで、やはり今一番話題を集めているのは、Saasとオープンソースだと思います。OracleがSiebel on Demandを投入して、激しさを増す競争や、それを迎え撃つSalesForce.com、オープンソース陣営のSugarCRMなど、一昔前までは、オープンソース化が価格破壊をもたらしていたOSや、H/Wのインフラ分野でおきていたことは、今は情報系のアプリで起きていることを感じます。ERPなどの業務系ではまだすすんでいない部分は感じられましたが、時間の問題だと感じています。
そのうちにオープンソースのCompierがもっとメジャーになったり、ERP.comのようなサービスが始まるのだと思います。
Salesforce.comは、IT資産を持たずに(COBITで言うところの、インフラ、アプリ、人)手軽にCRMを手早くはじめられるのが売りでしょう。固定費を変動費化できるし、開発に必要な時間も少なくなるので、CRMを自社でもち、カスタマイゼーションすることが経営資源になっている会社以外は、利用する価値が大いにあると思いました。。(VRIO分析で、きちんと自社のCRM能力がどの程度なのかを見極める必要がありますが。。)
野村総研では、オープンソースのワンストップ保守サービス、OpenStandiaの説明をされていました。簡単な申し込みで今あるオープンソース資産を保守してもらえるとの事で、対応しているオープンソースソフトの数もかなりあるので、使えるのではないでしょうか。。SugarCRMとOpenOLAPを組み合わせた販売管理、予測システムのデモがあり、オープンソースでもかなりのことができるようになったと感心したしだいです。。
今度はInteropにお邪魔して、インフラ関連の技術トレンドを追ってみたいと思います。
2007年5月16日
COBITとITリテラシー
ITリテラシーという言葉が話題に上ることが多くなっています。
経営者の説明責任が問われる中で、企業においてITに多額の金がかかっている現状を、
株主に対してきちんと説明できなければならないという論理です。
COBITは、ITと経営を結びつけるフレームワークです。
一言で言えば、「4つのIT資産(アプリ、インフラ、データ、人)を34のITプロセスで適切に管理することにより、6つの有効性指標で経営とITが結びつく」というものです。
34のプロセスに合計300弱ものCSF(重要成功要因)があり、それぞれに対して、成熟度を
図っていきます。。成熟度の判定はアセスメントを監査人の判断によりますので、相対評価というよりかは絶対評価の指標として利用するべきで、自社のITプロセスの中でどの部分が、他の部分に比べて弱いか、ということがCOBITのフレームワークを用いることで、浮かび上がってきます。。
COBITは去年の秋ごろに4.0がリリースされ、大きな変更点としては、他のフレームワークとの
連携に気を使われているということです。(ITIL,CMMI,PMBOKなど)
たとえば、ITILでは障害がおきたときに、インシデントと問題と二つに分けて考えますが、COBIT4.0からはこれらを二つに分けて考えられるようになっています。
2007年5月14日
イノベーションはマネジメントできるか??ルースカップリングとゴミ箱モデル
研究開発など、イノベーションが鍵になる分野では、イノベーションを以下に効率よく行うか、管理するかと研究がされてきました。3Mの15%ルールなどは、最も有名なもののひとつですし、C.クリステンセンのイノベーションのジレンマは、そのテーマを科学的、統計的に研究したことで、一躍大ベストセラーになりました。
そのイノベーション論の中でも、有名なもののひとつにルースカップリングとゴミ箱モデルというものがあります。
従来のイノベーションをプロセス面から見たものですと、顧客が何をほしがっているかを調査し(マーケティング的に)、内部資源・技術としてなにがあるかを探索し(ナレッジマネジメント・知財管理など)両者を結びつけるプロセスによってイノベーションが起こされる、とされてきましたが、このモデルだとうまくイノベーションを説明できないと言うのが、ゴミ箱モデルを提唱したJ.K.Marchらの主張です。
ルースカップリングとは、まずイノベーションに係る事柄を4つの独立した【流れ】として捉えます。
- 問題
- 解決策
- 参加者
- 選択機会
従来のプロセス論では、3.参加者が、2と1の最適な結びつきを、得られたデータから見つけ出すというものですが、ルースカップリングでは、これらの4つの要素は互いに1対1の関係をとらずに【緩やかに】結びついているものとされます。
次のゴミ箱モデルでは、解決策にいたるイノベーションは、【適切なタイミングで】これらの4つの流れがひとつの【ゴミ箱】の中に放り込まれたときに、なされるというものです。
ですので、イノベーションをマネジメントするにはい、以下によい4つの流れの緩やかな結びつきを維持し、適切なタイミングでそれらをゴミ箱に放り込むかということが大事になります。
R&Dを担当されているかたは、この理論が経験を裏打ちしていると感じることが多いようです。
2007年5月13日
海外進出 ロジスティクス
昨日のMBAの講義では海外進出の際のロジスティクスについて、学習しました。
行くつか評価ポイントがあり、それを6つのフレーム、6Cに落とし込みます。
- Cost
- Capital
- Control(現地企業の利用方法など)
- Coverage
- Charter
- Continuity
CostとControlは密接に関係しており、コストを抑えるために、最初は本国の開発、生産に特化し、販売・サービスだけを中間業者に頼る形から、海外展開がおおよそ始まります。その後、現地自販社を設立。理論的には、現地からの情報や、アフターサービスの必要性が、販売量の増加とともに高まるので、自販社を設立することになります。その後、生産、開発も必要に応じて現地国に移され、現地国との交渉などにより、生産はノックダウンなどの形がとられる事もあります。
自販社の設立は2のキャピタルと関連し、進出携帯では、新規・グリーンフィールド、M&A,所有形態では完全所有もしくは合併がとられます。
来週はその他の項目について議論します。
2007年5月11日
規模の不経済
今日の日経の記事で、ビール会社が消費地生産を加速させるとあり、目に留まりました。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20070511AT1D1006110052007.html
一般には、生産拠点は集約して規模の経済を利用するというのが、教科書に
ありますが(工場の床面積は2乗で増加するのに対して、液体をためるタンクの体積は
3乗で聞いてくるので規模の経済性がある)また逆も真なりにて、規模の不経済と
言うこともあると思います。。
原油の高騰や、鮮度に対する消費者の欲求が高まり、集中・統合することの
規模の経済よりも、規模の不経済の方が目立ってきた、ということなのでしょう。。
ITの利用で拠点間の生産調整がやりやすくなったということもあるかもしれません。。
書評 ITポートフォリオ戦略論
なかなか、「これがバイブルだ」、といえるような本が見つからないIT投資論の分野の本です。読んだ中では、非常によくまとまっており、MBA本の戦略論のようにスマートで、理解しやすい本です。自分の専門でもあり、興味を持って読めました。
大きく分けて、4つのことを論じています、①ITポートフォリオ(いわゆるMITモデル)、②ITインフラ投資、③IT投資判断とその評価、④IT投資による価値創造の原則論 になっています。
ITポートフォリオでは、いわゆるMITモデルにより、IT投資を戦略投資、情報投資、業務投資、インフラ投資に分類して管理することが書かれており、それをもとに、事業部制組織がどのようなポートフォリオモデルを持つべきか、事業戦略とポートフォリオをどう関連付けるか(差別化戦略は、戦略投資を多めに、など)、業種ごとにポートフォリオをはどのような傾向になるかなどが説明されています。リスクとリターンの最適化においても述べられていて、景気が良いときは、インフラ投資や戦略投資の割合を増やし中長期的な視点を持ち、景気後退期は業務投資を増やして、コスト削減につとめるべきとのことがあり、至極納得ができます。
ITインフラ投資では、4つの投資の中でも最も判断が難しいと思われるインフラ投資にスポットを当てています。インフラ投資を考える際のリーチとレンジの概念、インフラ投資の戦略性、中長期的な視点が必要であるために、原則によるマネージメントなどです。
IT投資判断とその評価では、ポートフォリオごとによる投資判断とその評価方法が論じられています。リターンを、確定しているベネフィット、想定されるベネフィット、計測できないベネフィットに分けてかんがえ、たとえば業務投資では確定ベネフィットの割合が高いので、投資判断は行いやすいが、インフラ投資では、想定ベネフィットと計測不可ベネフィットが高く、投資判断基準はDCFだけではなく、定性評価も盛り込んだものにする必要がある、事などです。
ITによる価値創造の方法論では、ビジネス原則とIT原則を対応させることの重要性や、価値変換システムとして、経営幹部のITへの積極的な関与や、社内政治の少なさなどをあげています。またITポートフォリオによってリスク・リターンを管理して、ビジネス価値を管理することも明記されています。
以上、まとめると値段分のリターンは確実に得られる本だと思います。IT投資の意思決定を行っている人や、IT業界で営業をしている人には一冊もっていると役立つと思います。ただし、非常によく概念的にまとまっている分、実例など具体性が低いので、それらは日経のIT専門誌などを用いて補う必要があると考えてます。