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社説

ビラ配り有罪 寛容さ欠くと息苦しい(12月14日)

 政党ビラを配るためマンションの廊下に立ち入った僧侶に対して、東京高裁が刑法の住居侵入の罪で罰金の有罪判決を言い渡した。

 公判では「表現の自由」と「住居の平穏」のどちらを重視するかが争われた。

 判決は住民の許可を受けないで立ち入った行為を処罰しても、表現の自由に反しないと判断した。一審の無罪から百八十度転換し、集合住宅への政治的なビラ配りを有罪にする最近の司法の流れに沿った判決である。

 このマンションに限らず、住宅には毎日のようにビラやチラシ類が投入されている。不要や不快と感じる住民がいるとしても、ドアポストに差し入れただけの人に刑事罰を科するのは行きすぎではないだろうか。寛容さのない社会を助長する判決は残念だ。

 発端は二○○四年、東京のマンションで僧侶が共産党のビラを各戸のドアポストに入れた。住民が110番通報し、駆けつけた警察官が逮捕した。僧侶は二十三日間も身体拘束された。

 判決は、管理組合の理事会がチラシ類の配布のための立ち入り禁止を決めていたことを重視した。たしかに、玄関には「敷地内に立ち入り、パンフレットの投函(とうかん)、物品販売などを行うことは厳禁」との張り紙があった。

 このマンションは、オートロックではなく、管理人も常駐していない。玄関と外階段の計三カ所から出入りできる。当時はピザ宅配などの商業ビラも入れられていた。

 こうした実態から一審は「立ち入り拒否の掲示は商業ビラの配布を禁止する趣旨」として被告を無罪とした。

 二審判決も、表現の自由は、民主的なプロセスの維持に欠かせない基本的人権であると認めている。ただ、公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を受け、他人の財産権などを不当に害することは許されないとした。

 そのうえで、許可を得ないビラ配りのための立ち入りに刑罰を科したわけだが、「必要かつ合理的」な制限としてはあまりに広範囲ではないか。

 ビラは意見や情報を多くの人に伝える簡単で効果的な手段である。自分と異なる意見のビラが入っていても、多様な情報を得る受忍の範囲内だろう。

 商業ビラ配布で罪に問われた例は聞いたことがない。どうして政治的意見を書いたビラだけ摘発されるのか。

 かつては過激派やオウム真理教に適用された微罪での逮捕・立件が、拡大されていく不安も感じる。

 東京高裁は二年前、自衛隊宿舎に反戦ビラを配った市民運動家に逆転有罪判決を言い渡した。東京地裁も昨年、マンションに共産党機関紙を配った社会保険庁職員に有罪判決を出した。

 反戦ビラと今回の事件を審理する最高裁は、もっと実態をふまえ、表現の自由を重視した判断を示してほしい。

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