基礎年金番号に統合されず持ち主が分からない「宙に浮いた年金」記録約五千万件の全体像が初めて明らかになった。
入力ミスや漢字の誤変換などで38・8%の約千九百七十五万件で名寄せ(照合)作業が難航し、このうち全体の18・5%に当たる約九百四十五万件の持ち主を特定するのは困難なことが分かった。社会保険庁の業務のずさんさが、あらためて浮き彫りになった。同時に問題の深刻さを如実に物語っているといえよう。厚生労働省と社保庁の責任は極めて重い。
社保庁は氏名、生年月日、性別の三条件が一致するよう名寄せ作業を進めてきた。持ち主と特定できそうな記録は21・6%にとどまる。ほかに死亡が判明したケースなどがあるという。
政府は来年三月までに、すべての名寄せを終えるとしてきた。安倍内閣から福田内閣に引き継がれた公約だが、少なくとも二割近くが困難視され全面解決はほぼ不可能になった。
舛添要一厚労相は「最後の一人、最後の一円まで確実にやる」と強調してきたが、発言は一気にトーンダウンした。名寄せはエンドレスで行うが「できないこともある」と全面解決の方針を事実上撤回した。
公約違反との批判に対し、舛添厚労相は「すべてを解決すると言った覚えはない」と解釈の違いを持ち出すが、あまりにも見苦しい。見通しの甘さをきちんと認め、謝るのが筋だ。
社保庁は詰めの作業として、記録不備の該当者と見られる人に注意喚起を促す「ねんきん特別便」の発送を近く始める。効果を検証しながら、分厚い対策を講じていく必要がある。