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社説

年金記録照合 空約束で済ませるのか(12月13日)

 政治家の発言はこんなに軽いのか。誰のものか分からない五千万件の年金記録をめぐる公約の話だ。

 コンピューター上の基礎年金番号の記録と照合する「名寄せ」を政府・与党は来年三月末までに終えると繰り返してきた。

 しかし、記録の不備で全体の四割で作業が難航し、本年度中に完了させる方針を事実上撤回してしまった。

 これでは、参院選を乗り切るため、できないことを約束したと批判されて当然だ。公約違反の責任は重い。

 四割のうち半数の九百四十五万件の記録は、持ち主が特定されずに終わる可能性が高い。オンライン入力時の転記ミスや届け出の誤りが原因だ。

 記録の持ち主は年金額が減り、無年金になる恐れもあるから深刻だ。

 舛添要一厚生労働相は記者会見で、「ここまでひどいとは想定していなかった」とひとごとのように言った。

 照合作業の見通しについては「エンドレス」、つまり、終わりがないと開き直った。責任閣僚としての当事者意識があまりに希薄だ。

 政府・与党はここに来て、来年三月まで終えると約束したのは名寄せと、基礎年金番号に「統合」できそうな人への通知の二点であり、統合を完了させるわけではないと強調している。

 安倍晋三前首相は参院選を通じて、「最後の一人まで記録をチェックし、年金をきちんとお支払いしていく」と約束した。福田康夫内閣にもしっかり引き継がれたはずだ。

 町村信孝官房長官に至っては「選挙だから、『年度内にすべて』と縮めて言ってしまった」と弁解する。

 国民の多くは、年金記録問題は年度内に解決するのが公約だと受け止めたのではないか。

 あいまいな物言いで期待を抱かせたのだとしたら有権者を愚弄(ぐろう)している。社会保険庁も、やるべきことを確実にやってきたのか疑問だ。

 政府は今後、名前や生年月日が多少違っても記録統合に結びつくよう検索の幅を広げて名寄せを進める。

 いつまでに、どこまでできるのか、政府は掛け値のない進行表を示すとともに、作業の途中経過と先の見通しを国民に適宜示すべきだ。

 社保庁は手始めに十七日から、宙に浮いた記録と結びつく可能性のある人に「ねんきん特別便」を送り、加入記録の点検を呼びかける。

 特別便を受け取った人は、記録に漏れがないか確認し、間違いがあれば訂正手続きが必要だ。社保庁はここでも年金制度の「申請主義」を貫く。

 だが、国民から保険料を預かりながら、ずさんな管理で申請主義の根幹を揺るがせたのは社保庁自身だ。

 誰も当事者意識を持たず、責任を取らないことが年金問題をここまで大きくしたことを忘れてはならない。

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