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限界集落



 一般に、65歳以上のお年寄りが人口の半数を超え、冠婚葬祭や山林、道路の手入れといった住民の互助機能も消滅寸前の集落を指す。国土交通省の調査では、65歳以上の住民が過半数の集落は全国7878、うち九州は1635に上る。政府は11月末に決定した地方再生戦略の中で「基礎的条件の厳しい集落」(限界集落)の支援を打ち出した。

競争原理VS保護政策 「限界集落」ネットで火花 地方の疲弊は都市にも影響 末端に居座り…税金の無駄

2007年12月12日掲載)

 過疎化と少子高齢化が著しく進む「限界集落」をめぐり、インターネット上で今秋、興味深い論争が巻き起こった。経済性や効率性、地域間の競争原理に重きを置く「都市の論理」と、国土保全や食料生産の重要性を踏まえて山村や漁村への保護政策の必要性を主張する「地方の主張」が真っ正面から衝突した。

 (わたしたちの九州取材班)

 ■問題を提起

 「なぜ、限界集落応援的な報道が多いのでしょう」−。10月22日、インターネットの掲示板「OKWave」に、こんなタイトルの質問が書き込まれた。

 論争の舞台となった掲示板は「日本最大級のQ&Aサイト」とも呼ばれている。誰かが掲示板に書き込んだ疑問や質問に対して、不特定多数の人が意見や回答を寄せる仕組みだ。

 質問はこう続いた。「日本の総人口が減る傾向の中、経済的に成り立ちづらい末端の地域に居座り、医療不足だの、福祉の手が届かないなどと言っている住民は、税金を無駄に使わせる原因をつくっている、わがままな人間ではないでしょうか」

 ■反発相次ぐ

 この問題提起に、地方側に立つ人たちから反発の言葉が相次いだ。

 「住み慣れたところから離れたくないのは当然の感情」「山村は手入れも何もしないと、川、山自体も崩れます」

 総じて、地方の実情を知らない都市住民への不満が目立った。「地方の疲弊が進むと、食料を大量に消費し続ける大都市の存続にも影響する」と訴え、都市住民に理解を求める記述もあった。

 地方の主張はさらに、国防や安全保障論にも及んだ。「無人の地域が増えれば、国防上も好ましくありません」「管理保護しない地域は国土ではないと、他国から奪われそうな気もします」

 ■都市の論理

 さらに都市側も反論した。「限界集落などさっさと見捨てて、みんな都市へ移住を」との主張は極端にしても、「そこ(都市)から農地へ通勤するのが正解」とする提言には、賛同者も少なくなかった。

 右肩上りの時代に「国土の均衡ある発展」を合言葉に進められた地方の公共事業や過疎対策事業も、やり玉に挙がった。国や地方自治体の財政難を踏まえ「(採算が)ちゃんと成り立ってこそ、美しい自然、地方農業が成立する」と、巨額の公費投入を疑問視する内容の書き込みもあった。

 農村の高齢化に伴う耕作放棄地の増加について「山間部にしばりつけておくよりも、年金で生活できる家庭の場合は、都市部への移住を促すのも一策」などの提言は、今後の過疎対策の参考となりそうだ。

 都市側、地方側いずれの代弁者も、過疎問題に有効な対策を打てなかった政治や行政に対する不満は、共通する部分がある。ある投稿者は、郵政民営化や地方の医師不足を例に「国策でもって地方に住みにくくしている」と批判。どっちつかずの姿勢を示しがちな政治家に対して「選挙で農村票がほしいから」とする解説もあった。

 ネット上の論戦は、都市と地方の意識格差や、過疎や限界集落をめぐる問題の複雑さを浮き彫りにした。地域間の立場の違いや政治、行政の垣根を超えた議論が今後、必要といえそうだ。

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