しかしながら,ポスドクは大変悲哀に満ちた存在である.まず,日本学術振興会特別研究員の場合,次のような社会的不利益がある.
- 雇用形態をとっていないため,社会保険が無い.つまり,自分で国民年金と国民健康保険に入らなくてはならない(これが精神的に一番痛い).住宅補助や通勤手当などの福利厚生が無い.(そのくせ所得税だけはきっかり取られる.)
- やはり雇用形態をとっていないため,厚生労働省の分類では「無職」と同類らしい
- 通勤手当がもらえない.定期代は自腹である.
通勤手当,社会保険,住宅手当などは,研究機関系のボスドクではたいがいついてくるようだ. ひどいぞ学振. あと,ポスドクに共通の悩みとしては,「確実にクビになる」というものがあるだろう.
さらに,私のいた東工大においては,大変不便なことがあった.
- 学振から身分証明証が送られてくるまで,図書館が使えなかった.使えるようになっても,使用者の分類は「研究生」であった.腹立たしい.
- どうやら,私の名前で郵便が送られてきても迷子になってしまうらしい.つまり,私の存在は大学のどこにも登録されていない.
- 健康診断は受けられないと思う.
私は学振の身分証明証があるからまだ良い.教官の研究費で雇われているポスドクはどうするのだろう.図書館は使えるのだろうか.おせっかいながら心配してみる.(未確認情報では,科研費の場合は大学の非常勤職員になれるらしい.つまり,
学振が「底辺」なのか?)
こう考えると,「ポスドク1万人計画」などで,国としてはポスドクを増やそうとしているようだが,本当にやる気があるのか? と,疑わしくなってくる.公共事業で箱物だけ作って,その後の利用を考えないように,金を与えるだけで,研究の事なんてどうでもいいと考えているんじゃないか,と疑いたくなる.
せめて大学から在籍している「形」(証明証等)が欲しかった.外国の大学のホームページなどを見ると,ポスドクは常勤の教授らと共に faculty
member (教育研究スタッフ)にリストアップされている場合もある.今のままでは,まるで旗本退屈男である.(わけわからん)
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