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’08税・財政:私もひとこと 野村総合研究所主席研究員、リチャード・クー氏

 ◇再建、民需回復がカギ

 バブル崩壊後の15年間、企業は借金返済に走った。家計が貯金したカネと、企業が借金を返済したカネが銀行にたまり、借り手がいなくなった。政府がカネを借りて(国債を発行して)使わなければデフレスパイラルになっていた。民間の資金需要の回復と財政削減(国債発行の縮小)の整合性が取れないといけない。

 例えば1000の所得があり、900使って100貯金したとしよう。この100を借りる人がいなかったら、経済は900に縮小する。それを避けるために政府が100借りてきた。もし民間が50借りることになれば、50は財政再建に使ってもよい。でも、民間の資金需要が十分に改善せず、50借りる人もいないのに財政再建を急ぐと、また景気の腰を折り、税収が落ちて財政赤字が増えてしまう。

 企業の借金返済は全体で見ると止まり、一部の企業はカネを借り始めた。日本経済は最悪期を脱したといえるが、まだ政府がカネをちゃんと借りて使わないといけない。今、長期金利は1・5%前後で、人類史上最低の水準。これは「政府がカネを借りるのをやめたら、他に借りる人はいませんよ」という市場のメッセージだ。正常な金利がついている国なら財政再建を絶対やるべきだが、日本のように異常な金利の国では、財政再建を急ぐべきではない。【聞き手・川口雅浩】=つづく

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 ■インタビューを終えて

 小泉政権以降、歳出削減と新規国債の発行抑制は財政改革の主眼だ。無駄な公共事業などをやめ、国の借金を減らす考え方はわかりやすい。

 しかし、民間の資金需要が少ない現状を考えれば、あえて国が借金をして公共投資をし、マネーを回転させ続けなければいけない、というのがクー氏の理論だ。

 財政再建の必要性はクー氏も否定しない。問題は経済実態を踏まえた財政再建のタイミングとスピードだろう。

毎日新聞 2007年12月13日 東京朝刊

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