政治的な思惑が優先か 前の市長も、赤字体質をさらに悪化させる人工島などの見直しをするとして当選したが、いつのまにか人工島推進派になった。 新しい市長は「今から海に戻せますか」という開き直りで、人工島への事業誘致を進めようとしている。 もちろん、海に戻せないが、開発型行政の見直しがされると期待した市民からは、失望感が広がっている。 事業誘致のひとつとして、人工島に医療・福祉ゾーンへの福岡市立こども病院・感染症センター(以下「こども病院」と略)への移転を決めようとしている。それに対して「福岡市政をかえる中央区市民の会」は、人工島移転に反対する立場での要望書を提出し、市内の小児科医の有志も移転反対の要望書を提出。さらに、福岡地区小児科医会による陳情も検討されている。 市長は、12月中の決断を延期することを表明している。いくつかの障がい者団体は、利便性での問題と小児神経部門が縮小される危機感をもっており、人工島移転に反対し、医師らとの連携を図ろうとしている。 福岡市の埋め立ての動き その頃に、市の東部に人工島「アイランドシティ」が着工された。その最終処分をどうするかで、市は苦慮している。厖大な予算を投入したので、回収するには分譲価格も高くならざるを得ない。景気の悪化とも重なり、進出してくる事業体は少ない。 また、市の財政悪化もあり、国民健康保険料が高いなどの市民の負担は高くなり、市民の開発行政に対する批判は強く、前、現、2人の市長は、開発行政に批判的な市政をみせて当選した。 さらに、こうした開発に関連する問題がいくつか見えてきた。 ◇ 人工島などの事業は第3セクターが実施したが、そこに天下った元市幹部と政治家がからんだ贈収賄があるのではと裁判になっている。 ◇ 人工島付近は有名な干潟があり、野鳥の生態系を狂わすなど、自然破壊の問題が今も課題になっている。 ◇ 開発行政に投資するために他の施策が遅れ、住みにくくなっている。 ◇ 人工島に予定していた高齢者施設などの医療、福祉ゾーンの事業者が決まらない。決まった事業者が、相次いで辞退している。 現在の市長は人工島事業の見直しをして「アイランドシティ整備事業及び市立病院統合移転事業検証・検討 報告書」としてまとめて、市民の意見などを求めたが、「こども病院」の人工島移転を前提にしたものだという批判が強い。 土地の売却が進まないで、赤字が増えるのは困るというのもあり、民間に売却できなければ市の内部で、なんとか早く処分したいのが本音であろう。 市立病院の移転の背景 「こども病院」は1980年に開業され、岡山県の岡山以西では、唯一のこども専門病院として、大きな役割を果たしている。 だが、私たち障がい者団体などにとっては、障害児や私が関係しているてんかんの医療などで不可欠な存在となっており、その機能が維持されるかどうかが大きな問題である。 「こども病院」は開業して30年経過し、老朽化しているのと駐車場スペースが少ないなどもあり、建て替えが必要になってきている。そこで、前市長時代から、1つの市立病院と統合し、移転することが検討されてきた。 では、人工島に移転した場合の問題点として、 1. 移転先とされる人工島は交通の利便性が悪い。公共交通機関がバスしかない。 2. 運営主体を独立行政法人・指定管理者制度などに移行する民営化案も出ているが、採算性が悪いといわれる「てんかん」などの障害児の医療体制が維持されていくのかどうか。 3. 大学病院などがあるから、東部で良いとする意見もあるが、すでに、大学病院、国立病院が独立行政法人に移行し、採算性の低いといわれる「てんかん」などの障害児の医療からの撤退が進んでいる。福岡市だけの責任ではないが、公的な医療として小児神経部門の充実が必要である。 4. 災害時に、橋でしかつながっていない人工島、(ふくおかアイランドシティ」参照 )が孤立しないのか。2005年の、福岡県西方沖地震で人工島では液状化現象が確認されている。安全性はどうなのか。 5. 福岡市の西部地区に、子供を診る大きな病院がない。福岡市に隣接する、糸島地区を視野に入れた福岡市西部地区への病院設置が望まれる。 既に完成している大型プロジェクトをどうするのかという難題ではあるが、市の都合だけでなく、市民のためになるという視点で検討されることを期待する。 なんでも、民営化すれば良いという主張が受け入れられ、てんかんなどの障がい者医療を担ってきた旧・国立病院、国立大学病院が、採算性が悪いと撤退している。必要な医療を、採算性だけでなく実施できる仕組みがないと、困るのは市民であり国民なのである。
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