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【北陸発】

安易なネット契約 無残 4カ月で340万円 多重債務者に転落 

2007年12月12日

多重債務になり自己破産手続きを進める女性。自宅には今もヤミ金融らしき業者からの勧誘はがきが送られてくる=金沢市内で

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金沢の女性 『携帯一本、実感なく…』

 「一時は死ぬことも考えた」。携帯電話の出会い系サイトに登録したことが発端で、金沢市の無職女性(33)が四カ月で計八社から約三百四十万円を借りる多重債務者となり、自己破産手続きを進めている。多重債務が社会問題として深刻化する中で、この女性を支援する金融トラブル被害者支援団体は「サイト使用料の決済のため、安易にインターネットでクレジットカード登録したことが問題の一因」と警鐘を鳴らす。 (報道部・白名正和)

 女性は十年ほど前に離婚し、いまは中学生の長男と二人暮らし。飲食店にパート勤めしていたときの収入は月十五万−十二万円。今年三月に父親を亡くし、家族を失った寂しさや女一人で家庭を支える不安を紛らわそうと、携帯電話の出会い系サイトに複数登録した。

 「職場と家とを往復するだけの生活で、他人と知り合うことがなかった。ただ誰かと話がしたかった」と打ち明ける。

 二カ月後、信販会社二社から五十七万円近いクレジットカードの請求書が届いた。返済のため消費者金融から二回に分け計五十万円を借りた。しかし、分割返済がかなわず、この五十万円を生活費や長男の養育費、法事の謝礼にと出費するうちに金銭感覚を失い、数社から借金を重ねた。

 借金をまとめようと雑誌の広告にあったヤミ金融業者に連絡。手数料として二十七万円を送ったが、連絡がつかなくなった。パート先に別のヤミ金融から電話がかかるようになり、十一月下旬、追い出されるように辞めた。残ったのは計八社からの借金。「お母さんもう死なないかんかもしれん」。長男と涙した。

 女性はネットの掲示板への書き込みを通じて、金融被害者を支援するNPO法人「金沢あすなろ会」(同市西念)の存在を知り、相談。いまは同会の指導で自己破産の手続きを進めながら、新たな勤め先を探している。

 多重債務問題をめぐっては、昨年末に貸金業法が改正され、消費者金融各社は「グレーゾーン(灰色)金利」を撤廃。石川県や金沢市など全国の自治体が対策協議会を設立した。しかしクレジット契約に関しては、未解決の課題も多い。クレジット契約を利用して高額商品を次々に売りつける商法も全国的に問題化しており、経済産業省は法改正に取り組んでいる。

 金沢あすなろ会の北山二三夫事務局長は「インターネットでクレジット契約が簡単にできるところに、制度として問題がある」と指摘、「安易な契約は駄目」と戒める。女性は「自分が甘かった」と反省する傍ら「(クレジットの)登録から支払いまで携帯一本。契約書もなく、契約の実感がなかった」と振り返った。

 

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