中国・大連に出店したラーメン店=7日(原陽介さん提供)
長野の人に育てられた味を中国にも−。長野市内で創業したラーメン店が、中国・大連で営業を開始した。県内を含め日本企業が多く進出する都市だが、お客さんは中国人を想定し、日本のラーメンで本場・中国人の味覚に挑む。経営会社代表の原陽介さん(30)=同市南高田=は、先の大戦中、旧満州(中国東北部)に渡った祖父から「現地で中国人にお世話になった」と聞かされていたといい、世代を超えた「恩返し」の意味もある。
「助屋グループ」で、大連店は10月に開店した。原さんによると、若者向けの洋服店などが多い地下街の一角にあり、面積は約50平方メートルで30席。「日式拉面(ラーメン)」ののれんを掲げ、中国では珍しい、とんこつ味のラーメン(8元=約120円)などがメニューだ。
原さんは事前に、中国のラーメン事情を調査。めんの量を日本の1・2倍にし、ニンニク、ショウガ、砂糖を多めに使う−など約2年かけて現地の好みに合うように研究。最初のうちは1日に20−30人の来客だったが、今は約200人。固定客もできたという。
原さんは2001年に同市南石堂町で開業。03年には全国の有名店が競う東京・新宿にも出店し、国内では県内9店、県外4店を構える。
大連を選んだのは、自身も参加している県内約150社でつくる21世紀ニュービジネス協議会(長野市)が昨年9月に現地に共同オフィスをつくり、今年6月には長野県人会が設立されたことも縁になった。
原さんの祖父の久司さん(85)は戦中、旧開拓団としてハルビンに渡り、飲食店で働いたこともあるという。原さんは「祖父から、敗戦の混乱のときにも中国人にいろいろお世話になった、と聞かされていた。役に立ちたいとの気持ちもあります」と話す。
全国のラーメン店の動向に詳しい「新横浜ラーメン博物館」(横浜市)によると、ここ5年くらいで海外進出するラーメン店が急増。来年の五輪開催地・北京を中心とした中国国内も含め、海外に約50店が出店している、とみている。
開店前から計15回大連を訪中している原さん。「急成長中の街に可能性を感じた。日本人向けの高いラーメンではなく、安くて中国の人たちが気軽に入れる店にしたい」と話し、さらにメニューの工夫に取り組む意向だ。