「布団の中で就寝するのは学会のホテルだけ。20年間、座布団の上で寝ています」−。多くの女性医師が仕事と育児との両立で悩む中、全国保険医団体連合会の女性部は12月12日までに、「女性医師の働く環境改善のための提言」を発表した。同女性部は「女性医師の労働環境改善は、男性も含めたすべての働く人の労働環境改善につながる」と強調。政府に対し、医師労働の特性に見合った保育制度、子育て支援策の拡充とワークシェアリング等の勤務形態の工夫などを求めている。
勤務医の1週間の勤務時間は、大阪府保険医協会の調べで、40〜60時間が39.5%と最も多く、次いで60〜80時間が30.0%。これらのほか、80時間以上が16.4%を占める一方で、40時間未満は13.0%に過ぎず、同女性部は「男女を問わず、約半数が過労死認定基準に該当しており、勤務医の働く環境は男女ともに過酷」と指摘している。
こうした実態に加え、20歳代では女性医師が3割以上に達するなど、同女性部は全医師に占める女性医師の割合が高まっていることを重視。しかし、結婚・出産・育児を経験することが多い医師免許取得後10年目前後に、女性医師の就業率は76.0%に低下(男性は89.9%)するなど、育児をしながら仕事を続けることが難しくなっている状況が明らかになっている。
また、保団連が今年10月に調査した「医師および歯科医師の精神状況」には、「子どもの保育園の弁当から始まり、PTAや歯科医師の仕事をこなし、家事をやりぬいています。毎日の睡眠は3〜4時間あるかどうか。布団の中で就寝するのは学会のホテルだけ。20年間、座布団の上で寝ています(子育て、主婦を親を頼らずに行うのは大変です)」という悲痛な声も寄せられている。
さらに、女性医師の6割以上が妊娠時の異常を経験。出産後も仕事を続けたいという女性医師は74.3%を占め、妊娠・出産・育児期に「産休の保障」、「育休の保障」、「当直・夜勤の免除」などを望む意見が多く、特に39歳以下の女性医師の場合には、仕事の充実のために必要な制度として「産休などの休暇の設定」、「育児施設の充実」、「代替医師の確保」などを挙げている。
このようなことを踏まえ、同女性部は「女性医師・歯科医師が働き続けられるためには、産休の保障と家事・育児支援、病児保育や病後児保育を含む保育施設の充実などが不可欠」と指摘。休職中の女性医師・歯科医師の復職では、「家事・育児支援と再就職支援が必要」として、政府に対し「医師労働の特性に見合った院内、病児・病後児、24時間保育等の保育制度、子育て支援策の拡充とワークシェアリング等の勤務形態の工夫や離職医師の復帰を支える医師再就業支援事業の拡充、子育て費用を税金控除の対象にする」ことなどを求めている。
女性医師の働く環境改善について、同女性部は「女性医師の労働環境改善は、女性医師のためだけではなく、男性医師の人間的な労働環境改善とともに、患者さんにとって安全な医療の提供につながり、ひいては男性も含めたすべての働く人の労働環境改善につながる」と訴えている。
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更新:2007/12/12 キャリアブレイン
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