◎北陸と台湾の交流 3空港の強み生かしたい
小松空港の台湾定期便就航を控え、石川、富山県は台湾との交流強化に向け、能登、富
山を含めた三空港を一体的にとらえ、効率的な活用を検討すべき時期にきている。北海道や東北などは広域的なエリアを背景に台湾誘客に取り組んでおり、両県が単独でやっていては激しさを増す地域間競争で遅れを取りかねない。
十一日の富山県議会本会議で、県側は富山―台湾定期便化に慎重な姿勢を示し、需要に
応じてチャーター便が就航する富山と能登、定期便の小松と、台湾ルートに関しては三空港の役割が明確になってきた。そう遠くない距離に「空の玄関口」が三カ所もある北陸の強みを生かし、他の地域にはまねのできない多様な観光ルートの設定や共同誘客に知恵を絞っていきたい。
富山県は当初、台湾との定期便化を探っていたが、観光客が四―十一月までに偏り、富
山県からの観光客、進出企業も少ないことを理由にチャーター便を重視する姿勢を鮮明にしている。ただ、今年度すでに百二十便を超え、好調さを取り戻した台湾チャーターも、小松の定期便就航によって影響を受ける可能性があり、今後は小松をより意識した誘致戦略が求められるだろう。
十一月に行われた谷本正憲、石井隆一知事の懇談では、それぞれが自分の県だけでなく
、北陸全体の魅力を発信することで一致し、観光説明会などでは三県が輪番制でPR役を務めるというアイデアも出た。台湾誘客はまさに歩調を合わせて取り組むべき典型的な課題であろう。台湾の旅番組ロケにしても、これまで両県で実施されるケースが多く、台湾側にしてみれば、県境は関係なく、「北陸」として一体的にみているわけである。
兼六園の今年の台湾入園者は十月末で前年比34%増の約七万千五百人、立山黒部アル
ペンルートも二〇〇三年の約二万人から今年は約八万七千人に達し、この二大名所が北陸観光の定番となっている。
これからはリピーター客を増やすことも大きな課題であり、そのためには飽きさせない
工夫がいる。三空港体制の利点を最大限に引き出し、多彩な周遊ルートを提案していけば、北陸全体の吸引力は確実に高まるはずである。
◎ずさん年金記録 政府はあてにならない?
基礎年金番号に統合されていない、いわゆる「宙に浮いた」年金記録の名寄せの現状が
初めて明らかにされた。名寄せが進められている約五千万件のうち、四割近くの約千九百七十五万件が過去の入力ミスなどにより難航しており、うち約九百四十五万件は持ち主を特定して統合するのが困難とみられるそうだ。
鼻っ柱の強い舛添要一厚生労働相も一部始終を説明した会見でお手上げの体で、「(記
録統合の)作業はエンドレスで、できないこともある」と認めざるを得なかった。
参院選絡みで、安倍晋三首相(当時)は「来年三月までに一人残らず名寄せを完了する
」というようなことを公約したが、確たる根拠を持っていなかったことが図らずも露呈したかたちである。
ずさんだったことにいまさらながらあきれる。阪神大震災やオウム真理教(アーレフに
改称)による地下鉄サリン事件に常軌を逸した円高などが重なって途方に暮れたとき、英国のエコノミスト誌が機知に富んだ論評をしたのを思い出す。「日本人は、かつては、いざというときには政府が何とかしてくれるものと思っていた。しかし、いまでは、多くの西側諸国の有権者同様、日本人にとっても、政府はもはや解決を与えてくれるものではなくて、解決しなければならない問題の一部でしかないことに気づいた」と。
総務省の「年金記録問題検証委員会」が先にまとめた最終報告書では、一九九七年に基
礎年金番号が導入されたとき、複数の番号を持つ五十六歳以上の人に対して番号の統合を促さなかったことなどが未統合のまま残った原因になったほか、過去のミスを記録し、チェックして削除する仕組みがなかったことなどが年金記録の不備を生んだと指摘されている。
厚労省は約一億人の公的年金加入者・受給者全員に対して社会保険庁の「ねんきん特別
便」を発送し、過去の保険料納付記録を通知する。宙に浮いた年金の持ち主を捜すためである。名寄せに限界があるとなると、ねんきん特別便が送られてくる機会に、心当たりの人たちは自らの記録をしっかり点検して間違いを見つけたら申告するしかない。