まだ食べられる商品をごみとして出すのはつらい、と経験者に聞いたことがある。繰り返されるニュースを見ながら、複雑な気持ちでそれを思い出した。
期限切れ商品の販売をはじめとする食品偽装問題だ。利益優先、消費者軽視の企業論理にはあきれるばかり。ただ、騒ぎを見ていてあらためて気になったのは、大量の食品を捨てざるをえない、または捨てることを前提に成り立つ今の生産流通システム。廃棄の基準は、食べられるかどうかでなく「期限」「調理後×時間」という物差しだ。
代表格の一つがコンビニなどで売られる弁当類。最大手のセブン―イレブン・ジャパンは今秋から、売れ残って期限が切れた弁当や総菜を家畜の飼料に使う試みを東京都内の店で始めたという。事業者から出る食品廃棄物を減らしてリサイクル率を上げる「改正食品リサイクル法」が十二月に施行されたのを受けた取り組みだ。
店頭から撤去した弁当など、堆肥(たいひ)にされていた商品を家畜の餌に回すことは一歩前進だろう。それでも食材に使われた命や、生産に携わった人を思うと、もったいない。
客を待たさぬよう作り置きし、時間が来たら捨てる。品切れを起こさぬよう余分に作る。おかげで欲しい物がすぐ買え、少しでも古くなったものは口に入らずに済む(この一年で信用できなくなったことも多いが…)。
その便利さに慣れた私たち消費者も含め、食品の大量廃棄が当たり前になった今の仕組みをもう一度考えてみることが必要なのではないでしょうか。
(津山支社・道広淳)