今年のノーベル平和賞授賞式がノルウェーの首都オスロで開かれ、地球温暖化防止に向けた取り組みを続けてきたアル・ゴア前米副大統領と、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」(事務局ジュネーブ)にメダルと賞金が授与された。
ゴア氏らへの授賞は、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書に続く新たな枠組みづくりに向けた合意を促す狙いもあるのだろう。ゴア氏はインドネシア・バリ島で開催中の気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)に出席するという。温暖化対策をめぐる交渉にも弾みがつくのではないか。
ゴア氏はクリントン政権の副大統領として京都議定書の誕生に尽力した。温暖化防止を訴え、自らも出演した映画「不都合な真実」は今年の米アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した。科学者らでつくるIPCCは、一九八八年から地球温暖化の将来予測や影響分析を続けており、十一月に第四次統合報告書を発表したばかりだ。
ゴア氏は授賞式で「地球は熱病にかかっている。一致結束して立ち上がり行動しなければならない」と、世界へ向けたメッセージを力強く訴えた。演説の中で「人類は文明継続への脅威という地球規模の緊急事態に直面している」と指摘、温暖化の弊害として「(水面上昇による土地の消失などにより生じる)難民が移動し、紛争発生の可能性を高めている」と警告した。
さらに「CO2への価格付けや課税が、問題解決への最も効果的で簡単な方法だ」と述べるとともに、「CO2の二大排出国、米国と中国は大胆な行動が必要だ」と対応強化を呼び掛けた。排出削減の数値目標設定に消極的な両国に国際協力を強く求めたのは、道理にかなった訴えだろう。
COP13では、二〇一三年以降の温暖化対策の枠組み「ポスト京都」をめぐる交渉で、先進国が温室効果ガスの排出を二〇二〇年までに一九九〇年比で25―40%削減する必要性などを明示した議長草案が示された。しかし、各国の思惑が交錯して協議は難航しているとみられる。削減義務をめぐる先進国と途上国の溝は深い。十二日からの閣僚級会合で合意できるかどうか不透明だ。
温暖化対策は待ったなしの状況にある。目先の国益や利害にとらわれていては取り返しのつかないことになろう。「平和賞」の威光を背負ったゴア氏らの本格的な活動が各国の政治的決断を促し、温暖化防止に向けたうねりに結びつくことを期待したい。
家電リサイクル制度の見直しを検討していた環境、経済産業両省の合同審議会が、報告書をまとめた。大手家電量販店で廃家電の不適切処理が相次いでいる事態を受けた防止策が柱といえる。
二〇〇一年の家電リサイクル法施行で、小売店に消費者からリサイクル料金を受け取り、廃家電をメーカーへ引き渡すことが義務付けられた。しかし、現行制度では廃家電の流れが確認し難いことから報告書は、小売店に引き渡しデータをパソコンなどに記録させるよう求めた。
廃家電を行方不明にしたとしてコジマが今年十月と今月の二度、不適切処理で両省から是正勧告を受けたのをはじめ、大手量販店の多くが勧告や厳重注意を受けている。行方不明の理由は盗難や配送業者の横流しとされ、不正輸出も多いとみられる。一年間に廃棄される家電の半分しかメーカーに渡っていない。
審議会は防止策を打ち出したものの、パソコンなどの記録だけで十分なのか、また小売店が確実に実行するのか明らかでなく、心もとない。両省は報告書を受けて法改正などの作業に着手する。改正の段階で、違反の際の罰則強化など実効性を確保する策を盛り込む必要があろう。
一一年のデジタル放送完全移行に伴い、今後廃テレビが増えると予想される。環境への負荷を減らすため、不適切処理をなくす仕組みにしなければならない。
報告書は、メーカーにリサイクル料金の引き下げも求めた。消費者が負担するリサイクル料金の高さは不法投棄の一因と指摘されている。金属価格の高騰で経費的には以前に比べリサイクルが楽になっている。メーカー側は努力すべきだろう。
(2007年12月12日掲載)