米軍が日本の基地に駐留する経費として、日本政府は毎年二千億円以上の「思いやり予算」を計上している。政府は、厳しい財政事情から来年度以降の大幅な減額をもくろんだが、米国の強い反対に押し切られた。財布のひもを緩めるのが早過ぎないか。
思いやり予算は、在日米軍の隊舎や家族の住宅整備など日米地位協定に基づくものと、その枠外で米国に代わって日本が負担している特別協定によるものの二種類がある。
今回焦点になったのは来年三月で期限切れの特別協定分だった。基地で働く日本人従業員の労務費や、米軍の光熱水道費などで、政府は五年間で五百五十億円を削る案を米政府に打診した。
ところが米側は、十一月上旬に来日したゲーツ国防長官が「この程度の問題で閣僚同士が話し合うとは」と不快感を示し、最終的には本年度の水準(約千四百億円)を維持することで、両政府が基本合意した。
日本にとっては、極めてタイミングが悪かった。インド洋で給油活動をしていた海上自衛隊が撤収した直後である。米国から「また負担から逃れようとするのか」と見られたようだ。一方で北朝鮮のテロ支援国家指定問題では、日本が米国に「解除しないように」とお願いする立場だった。
ただそうはいっても、いかにも腰砕けに見える。もっと交渉のやりようはなかっただろうか。
もともと特別協定は、円高で駐留経費がかさむことに対して日本が米国に出した助け船だった。一九七八年に始まった時は福利厚生費の一部負担だったが、何回かの協定改定で次第に拡大した。
金額はここ数年こそ下降傾向といえ、累計では五兆円に及ぶ。米軍が駐留している諸外国と比べても経費負担は突出している。
当初の事情を考えると白紙に戻していい既得権とも考えられる。そういったことを含め政府は筋を通した主張をしたのだろうか。
今の日本の財政は、生活保護の基準さえ切り下げようというほどの状態だ。政府が言う「日米同盟」がいかに大事でも、支払うコストとしてこの額が適正かどうかも疑問が残る。
日本はさらに、米軍再編に伴うグアムへの基地移転などで三兆円規模ともいわれる巨費を求められそうだ。これも合わせて、政府はまず国民の納得のいく説明を果たさねばならない。
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