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次々前言撤回 「責任逃れたい気持ちあった」 船場吉兆

2007年12月10日

 湯木正徳社長の妻で女将(おかみ)の佐知子取締役と長男の喜久郎取締役は午前9時半、弁護士2人に伴われ、京都市上京区の近畿農政局長室に入った。正徳社長は「入院中」として姿を見せなかった。

 着物姿の佐知子氏は深々と頭を下げ、厚さ約3センチほどの改善報告書を斉藤昭局長に手渡した。隣で喜久郎氏は目を閉じて頭を下げていた。

 午前10時過ぎから、喜久郎、佐知子両取締役は弁護士とともに京都市内のホテルで記者会見に臨んだ。冒頭、佐知子氏は「お客様、関係先、取引先の皆様、社会の皆様にご迷惑をかけ、食品の信頼を裏切ったことをおわびします」と謝罪し、30秒近く頭を下げた。

 続いて社内調査にあたった米田秀実弁護士が報告書の内容を説明。福岡市の「吉兆天神フードパーク」で、消費・賞味期限ラベル張り替えをパート従業員の独断と主張してきた問題で、米田弁護士は「パートの責任としたことを撤回し、深くおわびします」と述べた。佐知子氏もパートの独断について「(パートの責任は)本当にございません」ときっぱり否定。不正な賞味期限ラベルを張るマニュアルが存在することも認めた。

 ただ、次男で九州地区統括の尚治取締役は今も指示を否定しているという。尚治氏はこの日の朝日新聞の取材に「『はよ売ってしまいなさい』などと厳しく指導したことはあるが、商品の破棄に厳しい態度を取ったことはない」と主張した。

 ブロイラーを「地鶏」と販売していた問題では、前回の会見で正徳氏が「業者には地鶏を注文した。裏切られた」と京都市の鶏肉業者を非難。だが、米田弁護士はこの件も「地鶏と思っていたが、役員の認識が甘かった。業者に申し訳ない」と謝罪した。

 牛肉の産地偽装は「三田牛の牛肉業者はサーロインとリブロースがセット販売だったが、九州産の業者は必要なサーロインだけで売ってくれた」。当初は正徳氏が仕入れ、やがて喜久郎氏が引き継いだという。

 喜久郎氏は「法令順守の意識が甘かった」と頭を下げた。「最初から欺くつもりだったのか」と質問され、「結果的に欺くことになり申し訳ない」と何度も繰り返した。牛肉偽装は過去に複数回、調理場のスタッフ数人から指摘があったことも認め、喜久郎氏は「聞き流していた。怠慢だった」と説明。無視した理由は明言を避け、「消費者を欺く感覚はなかった」と話した。

 物販商品の大半が不正だった賞味期限は「大体1年持つ、2年持つだろう」と感覚で設定していたことも明かした。

 当初の説明が次々と覆ったことを「責任を逃れたい気持ちがあったのでは」と問いつめられ、喜久郎氏は「はい」と消え入るような声で答えた。ためらいがちに「自分でも何を言っているか分からなかった」と声をしぼり出した。

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